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八千代工業社長・加藤憲嗣氏 樹脂再生、大型部品狙う

虎視 勝ち筋探る車部品#13

―脱炭素の流れの中、主力の燃料タンク事業をどう進めますか。
 「『最後までタンクのビジネスをしっかりやる』と社内で言っている。右肩下がりの市場とはいえ、あと20年は売り上げが見込める。開発は絞るが、最後まで競争力を磨き、シェアを高めたい。その後も10年間は補修部品のビジネスはある。この間に樹脂事業の仕込みを進め、上手にシフトしたい。燃料電池(FC)向けの基礎開発もしており、水素タンクの分野で生き残る可能性も十分にある」

―燃料タンク、サンルーフに続く第3の柱に位置付ける樹脂事業ですが、競争は激しいのでは。
 「まだ日本とタイでしか樹脂のビジネスを取れていないが、研究開発は進めている。今後、樹脂をリサイクルして車の部材に使う時代が来る。タンクには再生材を用いており、当社が持っている技術を活用できる。小型部品については競争が激しい。バンパーやドアなどの大型部品の案件を完成車メーカーから取っていきたい」

―主要取引先のホンダはカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)への取り組みを求めています。
 「サプライヤーとして、また企業の責務として取り組まないといけない。ただ設備の入れ替えや再生可能エネルギーの活用には費用がかかる。事業性と脱炭素の取り組みのバランスをどう取るかが難しい」

【記者の目/時間稼ぎ次の大黒柱育成】
 ホンダ系サプライヤーの中でも、特に同社は「脱エンジン」の影響を大きく受ける。「主力事業の市場縮小」という危機にどう向き合うかとの問いに対し、まずは残存者利益を狙う戦略を採った。時間を稼ぎつつ、次の大黒柱として見込む樹脂事業を育てる構えだ。事業構造の変革に向け、強い覚悟で挑んでいる。(江上佑美子)

日刊工業新聞2022年2月24日

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