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武蔵精密工業社長・大塚浩史氏/EV製品 パッケージで

虎視 勝ち筋探る車部品#12

―自動車生産の停滞が利益の重しです。
 「自社のサプライチェーン(供給網)を鍛えていたつもりだが、急な減産への対応は難しく効率悪化につながった。この状況はしばらく続くと見ているが、半導体不足や物流の目詰まりといった課題は解消しつつある」

―主要顧客のホンダによる「脱エンジン宣言」への対応は。
 「電気自動車(EV)化への、ものすごい加速感がある。小型軽量技術や高耐久性、静粛性を武器に、ギアボックス用にディファレンシャルギア(作動装置)や歯車、周辺部品をパッケージ提供したい。ジョイント製品も引き合いは多い」

―キャパシター事業は1―2年内の黒字化を目指しています。
 「無人搬送車(AGV)なども含めたモビリティーと、無停電電源装置(UPS)などに使われる定置型の二つの領域で製品を仕込んでいる。米シリコンバレーでは新規製品開発や用途開拓も始めた。潜在性は大きく、社会に必要な技術だとの認知を広げたい」

―脱炭素の取り組みは。
 「この製品は何グラムの二酸化炭素(CO2)を排出しているか、という“値札”が付くようになるだろう。排出量の見える化、省エネルギーと使用電力のグリーン化、CO2の回収や活用の三つで取り組みを進める。見える化はグローバル拠点でほぼできてきた。創業100周年にあたる38年までに事業活動での脱炭素を目指す」

【記者の目/25年めど 投資で成果を】
 EV化対応や新規事業など、業界変革への仕込みは着実に進んでいる。足元の減産の影響は厳しいが、投資の手を緩めず25年頃にしっかりと刈り取れるようにすることが重要だ。大塚浩史社長の目指す「ギアボックスで世界シェアを語れる会社」の実現が、安定した収益を生み、次に挑戦できる体制を作るためにも欠かせない。(名古屋・政年佐貴恵)

日刊工業新聞2022年2月22日

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