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アイシン社長・吉田守孝氏/新型eアクスル、25年量産

虎視 勝ち筋探る車部品#01

―アイシン精機とアイシン・エィ・ダブリュが経営統合して2021年4月にアイシンが誕生し、同年6月に社長に就任しました。22年を戦術の実行の年と位置付けました。
 「就任時に『未来に向かってアイシンはフルモデルチェンジする』と話した。重点領域のカーボンニュートラルと電動化は専任組織を作るなど一気に戦略の策定などに取り組んできた。従業員の姿勢には、手応えをつかんでいる。先行きが不透明だからこそ、30年を見据えて一人ひとりが具体的に一歩踏み出すようにしたい」

―電動駆動モジュール「eアクスル」など電動化製品の拡充を進める計画です。
 「各国・地域で自動車に対するニーズは異なるので、電動化はフルラインアップで取り組む。最も力を入れるeアクスルは、小型化・高効率化した第2世代を25年、第3世代は27年に量産する。25年までに次期型の回生協調制御ブレーキを量産化する。こうした製品を統合したシステムにより走行時の電費を改善できるほか、車両に搭載する電池の量を25年時点で今と比べ10%以上減らせる。自動車メーカーなどにとって有益だ。我々は自動変速機(AT)など電動化対応製品の基礎技術を持っており、それを生かせる」

―カーボンニュートラル対応では、どのような点に力を入れますか。
 「鋳造部品など生産時に二酸化炭素(CO2)排出量の多い製品がある。CO2固定化技術やCO2を回収するメタネーション技術などで22―23年に実証実験のフェーズに入る。新型太陽電池は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業に採択された。設置自由度が高い点などが特徴だ。東京大学と開発を加速する」

―カーボンニュートラルなどはアイシングループを含めた取り組みが重要ですね。
 「私の長所は元気が良いこととチャレンジ精神で、従業員らとも話してきた。電動化、カーボンニュートラルは仕入れ先も心配している課題だ。グループでより連携し、仕入れ先とも一緒になって取り組む。カーボンニュートラルは自動車産業だけでなく製造業全体の大きなチャレンジでもある。協調領域は広がっている」

【記者の目/“らしい製品”で不安解消】
 アイシンは21年11月に開催したESG(環境・社会・企業統治)説明会で、変化に対応するための具体的な事業戦略を示した。同社が主力としてきたATは、電動化で需要減が避けられない。そうした点を不安視する向きもあったが、同説明会を契機に評価は変わりつつある。ATなどで培った技術力を生かして、アイシンらしい電動化製品の開発を22年に「実行」できれば、不安の声を抑えられる。(名古屋・山岸渉)

日刊工業新聞2022年1月27日

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