クボタが水環境3子会社統合、社長が力説するこれから
クボタは4月1日付で水環境事業関連の完全子会社3社を統合し、新子会社のクボタ環境エンジニアリング(東京都中央区)を発足させる。子会社再編で従来分散していたリソースを集約する。同社の水・環境部門の売上高は、過去最高業績だった2021年12月期の構成比で13・9%にとどまる。ただダクタイル鉄管など国内のインフラを支える部門だけに、体質強化につなげてシナジーを創出できる体制構築を急ぐ。(編集委員・林武志)
「3社合併でプラントとO&M(運用・保守)など、一体となって事業をつくり出していきたい」。今回の子会社再編について、クボタの北尾裕一社長は力を込める。新子会社が手がけるのは浄水場や下水処理場、し尿処理施設、廃棄物処理施設、ポンプ施設の運転・維持管理業務受託、設計・施工、メンテナンスなどだ。
現3社の事業領域は近接しているが、別法人のため業務管理における効率化が課題だった。新子会社発足でO&Mなどで統一的な基盤を固め、相乗効果を高める。水・環境に関する各種施設で、運営に携わる日本の自治体では今後、高齢化や対応できる技術人員の不足が顕著になる。
北尾社長は「鉄管だけ売るのではなく、システムとしてのソリューション提供」と、目指す水・環境プラットフォームについて説明する。統合する新子会社も生かし、「工事も含めて自治体が困るところに“刺さる”よう、総合的に提案できるビジネススキームに変えていきたい」(北尾社長)との狙いだ。
全社の屋台骨となる農業機械など機械部門の21年12月期の売上高は前期比23・6%増の1兆8648億円と好調。22年12月期も底堅さが続く見通しだ。ただコロナ禍での人員確保、半導体不足は利益の押し下げ要因になる。サプライチェーン(供給網)への対応強化は機械部門だけでなく、水・環境部門でも求められる。北尾社長は「課題が見えた。今年はしっかり対策していきたい」と強調する。
機械部門は農機や小型建設機械、エンジンなどで、水・環境部門も鉄管や合成管、素形材など事業領域は多岐にわたる。このためアナリストから「『コングロマリット(複合企業)経営ではないか』と言われることもある」と北尾社長は打ち明ける。
水・環境事業は25年12月期の売上高で、21年12月期比約3割増の4000億円を目指す。全社の中では規模が小さい同事業だが、社会インフラ維持の使命を背負う。北尾社長が掲げるソリューション提案は水・環境事業成長のけん引役。3子会社統合による新会社発足は、相次ぐ自然災害への対策強化にも結び付く。