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買い取り価格高騰、「旧車」ブームが広がっている

買い取り価格高騰、「旧車」ブームが広がっている

カレント自動車が実際に買い取った「日産スカイライン2000GT(通称『ケンメリ』)」。所有者の車庫でほこりをかぶっていた

「旧車」の人気が高まっている。旧車の買い取り事業を手がけるカレント自動車によると、2021年の同社への査定依頼数は前年と比べ80%増と大きく伸びた。電装化や電動化が進む以前の旧車は、直接的な運転感覚を得やすいといった点が魅力と言われ、自動車愛好家を中心にブームが広がる。それに伴い取引市場の動きが活発化し、買い取り価格も高騰している。自動車メーカーなどでは、旧車の補給部品を復刻する動きが相次ぐ。(日下宗大) 

旧車に明確な定義はないが、カレント自動車ではおおむね2010年以前に生産された車両と位置付ける。

旧車人気は買い取り価格を押し上げている。同社によると「車両によっては5―6年前と比べて倍以上だ」(清水篤朗買取事業部長)という。中でも国産旧車のスポーツカーが人気だという。

旧車価格の高騰理由には米国の「25年ルール」も関係する。米国では右ハンドル車を輸入できない規制がある。しかし製造から25年経てば、ルールが緩和されて米国でも輸入できる。「映画に登場した日本車が人気になる」(同)といった現象もあり、海外でも国産旧車の需要が高まっているという。

今後は電気自動車(EV)化が本格化し、エンジン車ならではの運転感覚を得られる旧車はより貴重な存在になると確実視される。

同社は旧車買い取りで20年以上の実績を持つ。その期間で構築した独自のネットワークで、手に入りにくい旧車部品を調達できる体制を採っている。10年超にわたり運転されていない旧車なども買い取って修理し、再流通した実績もある。同社では契約後の二重査定は一切しない点なども訴求して、旧車買い取り事業のさらなる成長を狙う。

自動車メーカーも高まる旧車需要を取り込もうと手を打つ。旧車ファンは、生産の終了した部品を整備工場などにオーダーメードで依頼したりして手に入れるケースもある。自動車メーカーは旧車部品需要は高いとみて、純正部品を再販売する動きをみせる。

トヨタ自動車は67年に発売したスポーツカー「トヨタ2000GT」の補給部品を20年に復刻して、再販売した。日産自動車はR32型の「スカイライン GT―R」のリアパネルなどを21年に商品化した。

タイヤメーカーも同様の取り組みを活発化しており、日本ミシュランタイヤ(東京都新宿区)は、旧式の米国製車などに適したラジアルタイヤを発売した。横浜ゴムは、国産車などへの装着を想定し、80年代にヒットしたタイヤを復刻した。

日刊工業新聞2022年3月21日

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