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樹齢800年のオオシマザクラの増殖を成功させた住友林業の技術

樹齢800年のオオシマザクラの増殖を成功させた住友林業の技術

1メートルに成長した苗木を持つ鵜川支庁長(右)と中村センター長

住友林業と東京都は、樹齢800年のオオシマザクラの増殖に成功し、1メートルに成長した苗木を伊豆大島に植樹した。住友林業は組織培養技術を初めて国指定の特別天然記念物に活用した。東京都総務局大島支庁の鵜川敬支庁長は「植樹した苗木を島全体で大切に守り、後世に引き継いでいきたい」と語った。

増殖したオオシマザクラは地元で「桜株(さくらっかぶ)」と呼ばれる。大島町のホームページによると江戸時代は船の目印となっていたという巨木。老樹となった現在は幹が折れ、枝が周囲に広がっている。桜は枝に根を張らす「挿し木」や「接ぎ木」で苗木を育てるが、桜株は弱っているため組織培養を採用。住友林業森林・緑化研究センターの中村健太郎センター長は「古木のため組織培養の材料となる芽がほとんど採取できず、培養液の条件を検討することに苦労した」と振り返る。同社と都は今後も連携し、東京にゆかりのある桜の保存と普及に取り組む。

住友林業は製品にする木材を伐採後、植林する苗木を育てるために組織培養を始めた。今は全国の名木や希少種の後継育成に活用している。北野天満宮(京都市上京区)のご神木「紅和魂梅」の増殖にも成功した。

日刊工業新聞2022年3月25日

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