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「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(10)こんな古い数字で、、

稲盛氏からの叱責で路線収支「見える化」。製造業の採算の考えを航空会社へ
 日本航空(JAL)が経営破たんを経て、京セラから導入した「部門別採算制度」は、「フィロソフィ」とともに強力な効果を発揮した。京セラ流の管理会計手法の部門別採算制度は、会社を7―8人のグループに分け、グループごとに収入と費用を徹底的に管理して採算の向上につなげる。製造業は仕入れから販売までの収入と費用の流れが直線的だが、航空会社は営業や販売、整備や客室など、社内で収入と費用の関係が複雑に絡む。このため部門別採算制度の導入は、部門間の収支の関係を整理するところから始まった。

 「こんな古い数字で経営はできない」。名誉会長の稲盛和夫から厳しい叱責(しっせき)を受け、JALが部門別採算制度の導入を検討し始めたのは2010年夏のこと。経営破たん前のJALは路線ごとの搭乗率は意識していたが、単価も含めた収支への意識が低く、数字の把握に1―2カ月を要していた。しかも、その責任の所在も明確でなかった。

 JALは京セラグループのKCCSマネジメントコンサルティング会長である森田直行の指導で、京セラの仕組みを移植する作業を進めた。稲盛とともにJALに入った森田は、部門別採算制度の伝道師とも言える存在。その森田から、常務執行役員で経営管理本部長の来栖茂実が最初に言われたのは「航空会社の生産拠点はどこか」という質問だった。

 京セラは工場単位で収支を管理する。航空会社で工場にあたる組織はどこかという発想から出た疑問だった。来栖は「収支管理の単位をどこにするかというのが最も難しく、当時は空港ごとや機長ごとに収支をみるという案も出た」と話す。ゼロベースで検討を重ね、路線で収支をみるという結論に至っても、その責任を取る組織がなかったため、10年12月に「路線統括本部」を新設した。

 JALは部門別採算の仕組みを導入するため、運航や客室、空港、整備など、運航を支援する各本部に対し、業務の単価を設定。路線統括本部は旅客販売部門からの旅客収入を受け、「協力対価」として各本部にこれを支払う。来栖は「このような社内取引の仕組みは、他の航空会社には例がない」と話す。路線統括本部は、製造業の考え方をサービス業である航空会社に移植して生まれた新たな発想の組織と言える。(敬称略)
日刊工業新聞2015年03月19日 建設・エネルギー・生活面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
稲盛氏はよく「数字に強い人材を育成する」と話す。数字をリアリティーと構想力を持って語れる人が多くいればいるほど、その企業は強くなる。

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