フェローテックホールディングス・賀賢漢社長インタビュー
フェローテックホールディングス(HD)は半導体市場の世界的な活況を受け、中国や日本で関連事業を加速する。中国ではすでに33もの子会社を持ち、これらを所管する統括会社(中国本部)を上海市に設立した。また日本ではTSMCなどの新工場といった大型投資が相次ぐ。さらなる需要増を踏まえ国内生産拠点の増強を進める。計画の詳細や市場動向について、賀賢漢(が・けんかん)社長に聞いた。
-2022年3月期の第3四半期決算を終え、通期で過去最高業績となる売上高1250億円(前期比36・9%増)、経常利益235億円(約2・8倍)を見込んでいます。
「通期予想を今期中に2度上方修正することになった。当初は業績を相当堅めに見ていたが、各事業を順調に伸ばすことができた。中期経営計画で23年3月期の目標を1年前倒しで達成できそうだ。2030年度の長期ビジョン売上高3000億円、当期利益300億円に十分手応えがある。ただ、それにしては市場の反応(株価)があまり良くないのが気がかり」
-まず、中国の事業ですが、上海市に設立した中国本部の目的は何でしょう。
「中国に生産拠点で10カ所、子会社数としては33に達している。それぞれをHDが直轄してきた。これを中国本部を通じて管理面でコントロールする体制に移行する。人材を統括する人事本部機能や研究開発(R&D)の中心的機能、各子会社のキャッシュ・コントロール機能などを持たせる」
-中国での事業拡大は継続しますか。
「パワー半導体はまだまだ需要増に追いつかない状況だ。パワー半導体用絶縁放熱(DCB)基板は月産110万枚、活性金属ロウ付け法(AMB)基板は同20万枚の体制に拡大、さらにセラミックス(DPC)基板の量産体制も整えている。今後、さらに増強していく方針だ。また、常山工場(浙江省衢州市)では金属加工(真空チャンバーやロボット部品など)を増産するほか、電子デバイスのサーモモジュールを22年内に増強する。これら以外にも資本業務提携により持分法適用会社である大泉製作所や東洋刃物との事業強化も検討していく」
-日本国内でもTSMCなどやキオクシアによる半導体投資が活発化しています。関連製品を担うフェローテックの国内の生産拡大についてはどう考えますか。
「グループのフェローテックマテリアルテクノロジーズ(東京都中央区)が石川工場(石川県白山市)の『第2工場』を新設する。半導体・液晶の製造用部品・検査治具の材料となるマシナブルセラミックスを生産。22年10月に稼働すれば、第1工場と一体運営により年産能力を現状比で5割増に引き上げる。将来は倍増までにすることを視野に入れる。またSiC(炭化ケイ素)製品を手がける岡山工場(岡山県玉野市)も需要増に対応する必要が出てきた。基本的にセラミックス製品など需要の高いものは増産したいが、コスト面を考えれば中国工場の方が有利になる。それでも日本製品を求めるニーズもあり、中国の生産体制と連携しながら日本の増産体制を構築していく」
-熊本県にTSMCやソニーなどが設置する新工場では、22ナノ-28ナノメートル(ナノは10億分の1)のほか、12ナノ-16ナノメートルサイズの半導体製造が追加される見通しです。フェローテックにとって有利に働きますか。
「半導体メーカーの製造に関しては、線幅が狭くなるほど当社にとって喜ばしい状況だ。狭くなるほどコンタミネーションを防ぐため製造工程のシビアな管理が必要になる。これに対応できる製造装置の治具・消耗材であるシリコンパーツやSiC製品が必要になり、我々の製品の活躍の場が広がる。先行きは新たな製品や周辺事業への参入の可能性も出てくると確信している」