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「標準化講座」を作りませんか?経産省が全国の大学に呼びかけ

IoT時代にらむ。山口大や横浜国大は来年度から通年授業に
 経済産業省と大学の連携により学生が標準化や規格化を学ぶ「標準化講座」が広がっている。山口大学や横浜国立大学などは2016年度から年間を通じた標準化講座を設置する方針を固めた。経産省は全国の大学に講座の設置を呼びかけるとともに、講師派遣などを通じて支援する。同省は標準化を知的財産と並び経営戦略上の重要項目として社会に浸透させる考え。この土台作りとして、大学生が標準化について触れる機会を増やす狙いだ。

 すでに22大学が標準化講座を設置済みで、このうち東京大学や一橋大学などは通期の講座を設けている。山口大は全学部で知財の通期講座を必修としている。16年度は標準化も同様に必修とする方針だ。横浜国大は既存の標準化講座を通期に拡張する。

 通期講座を設置済みの大阪大学は分野別の標準化講座を用意する計画だ。金沢工業大学は東京都内のキャンパスで設置している社会人向けの標準化講座を基に、学部生向けにも講座を設置する。

 大学側にとっては、標準化講座を充実することで他大学と差別化する狙いもある。経産省は経営層に標準化戦略を浸透させる方針の下、社会人向け講座を拡充中。その土台として大学の標準化講座の充実が必要としており、将来的には国際標準化について議論する国際会議の議長を担うような中核人材の育成につなげたい意向だ。

 米インテルやアップルなどは中核技術を非公開にし、周辺技術を公開する「オープン&クローズ戦略」で高い収益を実現してきた。この戦略では公開する技術を他社に使ってもらうために標準化することが前提。あらゆる機器がネットワークでつながるIoT(モノのインターネット)社会が訪れれば、標準化の重要性はいっそう高まっていく。

 標準化講座を設置している大学・大学院(カッコ内の通は通期講座を設置、拡は16年度に通期化するなど講座拡充)
▽大阪工業大学▽大阪大学(通、拡)▽大阪府立大学▽金沢工業大学(拡)▽金沢工業大学大学院(通)▽慶応義塾大学▽産業技術大学院大学▽芝浦工業大学専門職大学院(MOT)▽信州大学▽電気通信大学▽東京工業大学(通)▽東京大学(通)▽東京理科大学(通)▽同志社大学▽名古屋大学▽日本工業大学専門職大学院(MOT)▽日本大学▽一橋大学(通)▽北陸先端科学技術大学院大学▽山口大学(通、拡)▽山口大学専門職大学院(MOT)▽横浜国立大学大学院(通)
日刊工業新聞2015年12月30日2面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
経産省は昨年3月、「標準化官民戦略会議」を立ち上げた。「標準化を制するものが市場を制する」という考えからだ。会議でまとめた戦略には、企業に最高標準化責任者(CSO)設置などが盛り込んまれている。標準化活動で何より重要なのは経営者の深い理解だろう。大学の講座から未来のCSOが生まれることを期待。

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