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アスクル、医療・介護向けPB商品で“巨人・アマゾン”追撃

100万アイテムのパワー生かし、法人向け事業の収益さらに高める
アスクル、医療・介護向けPB商品で“巨人・アマゾン”追撃

福岡の物流拠点

 アスクルはBツーB事業の収益力を強化する。2015年6―11月期の営業利益率5・6%を7%に引き上げる方針だ。従来からのオフィス関係の商品に加え、急ピッチで伸びている工場や建設現場の消耗品・補修用品のMRO(メンテナンス・リペア・アンド・オペレーション)と、メディカル事業の商品販売を強化する。また高採算のプライベートブランド(PB)の開発を増やす。最近はアマゾンなどが事業所向け分野の商品政策に力を入れている。アスクルは蓄積した販売情報などを活用し一段の拡大を目指す。

 アスクルの15年6―11月期までのBツーB事業は前年同期比9・6%増の1348億円となった。このうち力を入れてきた「MRO・メディカル事業」は同18・9%増、「生活用品」は同12・4%増だ。採算性の高いMRO・メディカル分野の売上高が伸びたため全体の営業利益率も同3ポイント近く改善した。

 目標とする営業利益率7%への引き上げはこのMRO・メディカル事業などの一段の強化がテーマだ。これまで販売機会の少ない商品(ロングテール)を増やし、客数を伸ばす戦略が奏功している。

 この結果、全体のアイテム数は16年1月に100万アイテムを突破する見込み。アイテム数は11年5月期との比較では5倍以上となり客数、売上高増につながっている。売れ筋でない商品も一つの塊となれば、収益への寄与が高い。

 岩田彰一郎社長はMRO・メディカル分野では「ロングテールの商品を在庫できる拠点(の設置を)検討する」とし、圧倒的品ぞろえと迅速な配送の実現に向け、投資の検討を始める方針だ。

 「100万アイテムを扱えば売れ筋商品もみえてくる」(岩田社長)。BツーB事業の成長を支えるもう一方の原動力となっているのが、ビッグデータ活用のPB商品の開発だ。

ビッグデータの活用なるか


 アスクルのPBなどオリジナル商品の売上高に占める比率は17・6%、BツーB事業ではすでに20%近い。今後、力を入れていくのがメディカル分野だ。医療、介護の現場向けに約70品目を開発しているが、さらに35品目を増やす。

 この結果、MRO・メディカル分野のPBの合計は大幅に増える見通しだ。MRO・メディカル事業の品ぞろえの拡充で販売機会を広く獲得し売上高を高め、高採算のPBで収益を確保する戦略といえる。

 アスクルが自らの牙城であるBツーBの一段の強化に動く背景には、アマゾンジャパンの存在がある。「ベンチマークはアマゾン」。アスクルの岩田社長はこう話す。アマゾンはこのところ、産業用資材や研究開発用品など商材の販売を開始。事業所向け販売を強化しアスクルと競合分野も広がる。BツーB向けでは先行の強みを生かし、迎撃体制を整備する。
日刊工業新聞2015年12月29日生活面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
2015年6ー11月期の連結純利益は8年ぶりに過去最高。主力の法人向け通販事業で新規顧客が増え、特に建設現場や医療・介護施設向けの消耗品が好調。販売単価も上昇している。ここを重点化するのは当然だろう。一方でずっと課題といわれている個人向け通販「ロハコ」。同期は7割増収だったが依然赤字。親会社のヤフーとの関係も気になる。

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