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「全国の中小企業に五輪効果を」舛添東京都知事に直撃インタビュー

盲導犬の暑さ対策など、これまで気づかなかった課題も
 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催まで5年を切った。大会の準備を進める舛添要一東京都知事に、東京五輪を呼び水として取り組もうとする産業施策などを聞いた。

 ―五輪開催に向けた取り組みの現状は。
 「おもてなし、バリアフリー、ボランティアの育成、同時通訳ソフトによる多言語対応、テロ対策など、ハードとソフトの両面であらゆる準備を進めている。交通渋滞対策として選手が移動で使う専用レーンをつくり、宿泊施設不足については”民泊“を増やす」
 「人間だけでなく盲導犬の暑さ対策も必要など、我々も気づかなかった問題が出てきているので対応したい」

 ―大会後も見据えた産業振興施策の進捗(しんちょく)は。
 「大会開催効果を全国の中小企業に波及させる『中小企業世界発信プロジェクト』で、来年4月にビジネス情報ポータルサイトを開設する。サイトを見れば、どんな仕事やニーズがあるのか分かる。オールジャパンで中小企業が持つ優れた技術を打ち出すため、これまでに都の担当者が11の各県を回り、都と連携するよう交渉している。大会を契機に各地の中小企業に協力いただき、日本の力を示していきたい」

 ―都は温室効果ガス削減目標について、30年までに00年比30%減を掲げました。中小企業対策やインセンティブはどう考えていますか。
 「中小のテナントビル向け補助事業で、14年度から2年間で最大2000万円を助成するほか、省エネ性能の高いデータセンターで稼働するクラウドサービスに情報システムを移転したら最大1500万円の補助が受けられるようにした」

 「エネルギー管理士による無料省エネ診断の実施や、省エネ機能を持つ機材を購入した企業に対して法人事業税や個人事業税の一部を減免する取り組みも行っており、活用してほしい」

 ―ロボット産業の育成にも力を入れています。
 「東京都立産業技術研究センターで、企業との共同研究・開発によるロボットを活用した新しいサービスを創出する取り組みを始めた。ロボットは今後の成長産業と見込まれるので、実用化や開発を支援していく」

【記者の目】
 16年2月で就任丸2年を迎える。「これまでのうっそうとした林の間から、向こうの景色が見えてきた」と、自身がボランティア活動で林業に取り組んできたことに例えて振り返る。今後の舛添都政は「ゆとり」がキーワード。週休3日制といったユニークな構想も持つが、実現性はいかに。
(聞き手=大塚久美)
日刊工業新聞2015年12月24日 中小企業・地域経済面
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
五輪と全く関係ないのですが、東京都が導入した温室効果ガスの排出量取引、その後どうなったのでしょう。新国立競技場にもキャップ(総量削減義務)が課せられることになるのでしょうか。ニュースイッチ用に舛添都知事のインタビューを編集していて、ふと思いました。

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