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米の金融引き締め加速懸念で株安、今こそ求められる経済ジャーナリズムの役割

27日の東京株式市場で日経平均株価は、米連邦公開市場委員会(FOMC)を受けて想定よりも米金融政策の引き締めペースが速まりそうだとの懸念から、一時900円以上値を下げる展開となった。終値は前日比841円03銭安の2万6170円30銭だった。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の発言内容が想定よりもタカ派的だと受け止められ、リスクオフの相場展開が一段と激しくなった。

25、26両日に開かれた今回のFOMCは、利上げの開始時期と回数に加え、FRBのバランスシート縮小方針に関する手がかりを探る会合だった。パウエル議長が利上げ回数を会見で問われ、毎会合での利上げ可能性を明確に否定しなかった。2022年に4回と想定されていた利上げ回数が最大で7回になる可能性もあることから、想定以上のタカ派的なスタンスと市場関係者に受け止められ、株価の大幅な下落につながった。SMBC日興証券投資情報部の太田千尋部長は「FOMCはあと7回あるため、最大で7回の利上げもあり得る」と指摘する。

三井住友DSアセットマネジメントは22年の利上げを3月、6月、9月、12月の計4回とみる。同社の市川雅浩チーフマーケットストラテジストは「マーケットは4回以上になるかどうかで、5回の利上げを意識しつつある」と見通す。利上げ開始時期は、想定通り3月開始とFOMCの声明でも示唆された。

バランスシート縮小については今回はあまり手がかりがなかった。次回3月のFOMCで詳細が開示される見込みだ。

日刊工業新聞2022年1月28日
志田義寧
志田義寧 Shida Yoshiyasu 北陸大学 教授
約40年ぶりの高インフレを前に米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐ姿勢を鮮明にしている。これを受け、株式市場では売り圧力が強まっており、逃げきれなかった個人投資家からは悲鳴も聞こえてくる。こんな不透明感が強い時こそ、経済ジャーナリズムの出番だ。言うまでもなく、経済・金融分野は情報の非対称性が大きい。それゆえ、適時開示制度など非対称性の低減を目指す各種ルールが存在する。経済ジャーナリズムも同様の役割を担っている。情報を持たずに、あるいは理解しないまま判断を下せば、失敗するリスクが高くなる。それは世の中全体の厚生を低下させる。市場経済に組み込まれている経済ジャーナリズムは、情報をとるだけでなく、難しい経済・金融情報をわかりやすく伝え、情報の非対称性を低減させるという機能を持つ。その機能を適切に発揮できるかどうかは、経済記者の腕次第だ。最近は報道機関に所属しながらTwitter等で経済・金融情報を迅速に分かりやすく伝える記者も出てきた。このような記者がさらに増えることを期待したい。

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