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社員の士気を高めたイチネンホールディングスの巧みな人事戦略

イチネンホールディングス(HD)は19社ものグループ企業を傘下に収め、2004年3月期から営業増益を続けている。巧みな経営の一つが社員の処遇で、各社の給与や昇格を少しずつ改善し士気を高めてきた。

各社の人事制度の基礎とするのはイチネンHDのほか、祖業の自動車リースを手がけるイチネン、駐車場事業のイチネンパーキングなど。インセンティブの支給や性差のない昇格などを各社に働きかけてきた。イチネンHDの黒田雅史社長は「完全に同じにはできないが、イチネングループに入ったことで着実に処遇が改善し、士気向上につながっている」と説明する。

例えば旧東京電力系の自動車リース会社だったイチネンTDリースは、15年にグループ入りした。旧東電の車両管理も引き継ぎながら心機一転し、グループ経営に貢献している。黒田社長は「多くの企業が加わり活性化し、18期連続で営業増益を果たしてきた」と実績を示す。

さらに22年度からは希望すれば63歳まで正社員として働ける選択定年制度も、イチネンなど中核の数社が先行して導入する予定。60歳以降も正社員として処遇し意欲を保ってもらい、シニア人材の活性化を図る。

健康寿命の延伸や生活の維持などから、定年延長は時勢となっている。ただ、個人の働く価値観や体力差も多様なため、63歳になる前に会社都合扱いで退職できる選択制度の導入を検討している。

例えば62歳で退職し積み上げた退職金を得て、それから再雇用で週に5日未満の勤務や1日8時間未満の就業もできるような、各人の希望に合わせた柔軟な雇用を想定する。65歳までの雇用義務化を受け、会社にもシニアにもプラスになる雇用形態を模索する。

ほかのグループ企業に対しても、年齢や性別などで差別ない給与や昇格機会を求めるほか、異なっている定年制の平準化を進める。グループ社員の求心力を一段と高め持続的な成長を目指す。

日刊工業新聞2021年12月21日

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