駅改札そばに設置した対話ロボット、東京都交通局の担当者が指摘する課題
対話型ロボットが、電車の乗り換えや駅周辺の施設をご案内―。東京都交通局は2020年10月から、都営地下鉄浅草線新橋駅(東京都港区)で多言語対応ロボを運用。コロナ禍で外国人の利用はまだ少ないものの、注目を集めてきた。一方で音声認識の精度向上や、運用コスト低減などの必要性が指摘されている。こうした課題を解決し、訪日外国人数が以前の水準に戻った際にもロボが活躍することが期待される。(編集委員・斎藤弘和)
浅草線新橋駅改札外のツーリストインフォメーションセンター(TIC)に、NTT東日本が提供するヴイストン(大阪市西淀川区)製の対話型ロボット「Sota(ソータ)」が設置されている。TICを訪れた旅客は、ソータに話しかけるか、隣に置かれたタッチパネルで入力をすると回答が得られる。日本語、英語、中国語に対応している。
東京都交通局は、東京五輪・パラリンピック開催に伴う訪日外国人客の増加を念頭に、多言語対応ロボの導入検討や実証実験に取り組んできた。その後、コロナ禍の中で新橋駅での実運用が開始されたため、足元での外国人の利用は少ない。だが「日本人の方もゲーム感覚で、興味を持って使って頂いている」(東京都交通局電車部の大塚淳鉄軌道事業企画専門課長)。
新橋駅周辺はビジネス街であり、会社員の利用を想定した店舗が軒を連ねる。繁華街として知られる銀座エリアも徒歩圏内だ。そのためか、飲食店についてソータに質問する人も多いという。ただ、大塚専門課長によるとソータは「全てに答えられているわけではない。音声でのやりとりは改善の余地がある」。固有の店舗名を識別できなかったり、イントネーションによっては音声認識がうまくいかなかったりする場合も出ている。
加えて大塚専門課長は、ソータの費用対効果に関して「(人間が務める案内係の)コンシェルジュと比べても割高だ。普及には、コストダウンが必要ではないか」と指摘。「初期導入費用はハードウエアの面もあるので一定程度は致し方ないと思うが、運用費がもう少し下がってくれれば」と語る。
コストについて、運用を受託するNTT東のビジネス開発本部第三部門の岸美津子主査は「トラブルがあった時に駆けつけて対応するための費用などが、どうしても積み上がってしまう」と説明する。コンテンツの追加や、言葉を認識しやすくするための辞書データの更新といった作業も必要になる。
ソータの導入が進んでいけば規模の経済が働き、「管理の効率は良くなると思う」(岸主査)。また、東京都交通局の大塚専門課長は、複数の鉄道事業者が同じ駅に乗り入れている事例がある点を踏まえ「(各社が対話型ロボを導入した場合は)辞書を共通で持つこともできるのではないか」とみる。そうなればコスト低減だけでなく、よりきめ細かい案内ができる可能性も高まる。こうした観点でも、ロボの活用事例の拡大が期待される。