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ソフトバンクとベネッセが組んだ教育ITサービス会社のその後 

クラッシー・加藤副社長に聞く「教員も個別指導したいという意識が強い」
ソフトバンクとベネッセが組んだ教育ITサービス会社のその後 

授業にタブレット端末を使用するケースが増えつつある

 ソフトバンクグループとベネッセホールディングスが設立したClassi(クラッシー)が、学校向けITサービスを拡大している。教員の業務や生徒の学習を支援し、4月の有料化以降、全国120校以上の高校、中学校に導入された。一人ひとりの生徒の理解度に応じて、きめ細かい教育を提供できる効果も見込める。加藤理啓副社長に今後の戦略を聞いた。

 ―学校でのIT活用の現状は。
 「優れた教育システムが作られてきたこともあり、他の分野に比べるとITの必要性が低かったと思う。一方、政府が2020年までに生徒1人にタブレット端末(携帯型情報端末)1台を持たせる方針を打ち出したことで、ITへのニーズが高まっている」

 ―クラッシーを設立した狙いは。
 「(ソフトバンクグループの)孫正義社長から、『事業を始めるときは、そのど真ん中を見定めなさい』と言われる。今回は学校教育がど真ん中だった。ベネッセは模擬試験の提供などを通じて、学校に関連する知見を最も持っているため手を組んだ」

 ―学習支援のクラウドサービスを展開しています。
 「教員をどのように支援するか、を考慮した。授業以外の業務が多く、ITの活用で負担を減らす必要がある。有料化する前に100校以上に利用してもらい、300―400項目ぐらい直した。(教員にとって)分かりやすく、迷わずに使えることを重視している」

 ―生徒の現状の把握にもITが役立ちます。
 「ITが持つ良さの一つとして、見えなかったものが見えるようになることが挙げられる。(サービスの機能である)『生徒カルテ』により生徒に関する情報収集を支援し、成績の状況や校内での活動などが見やすくなる。これまで、生徒に対する気づきを教員同士が口頭で伝えていたが、”履歴“として残せる」

 ―生徒一人ひとりに適した学習の提供に向けて米ニュートンと連携します。
 「個別化した学びは今に始まったわけではない。生徒の学力差が広がる中で、教員も個別指導したいという意識が強い。そのため生徒に同じ問題を出して定着度合いを確認したあと、ニュートンの技術を利用して生徒に個別の問題を出せるようにする。生徒に寄り添う仕組みだ」

【チェックポイント/サービスの拡充がカギ】
 授業にITを活用する動きは始まったばかりで、ノートや教科書とともにタブレット端末が机に並ぶ学校がこれから増える見通しだ。すでに、グループワークの際に、タブレットで調べるといった活用法が出てきているという。動画による学習などもしやすくなるため、生徒の理解を深めるのに役立ちそうだ。学校向けIT市場の競争が激しくなることが見込まれ、ITならではの教材など、教員や生徒を支援するサービスの拡充が欠かせない。
(聞き手=孝志勇輔)
2015年12月22日付日刊工業新聞モノづくり面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
生まれた時から携帯電話があり、オンラインゲームで育った最近の子供たちはITへの親和性がものすごく高い。一方で40代以上のITリテラシーには大きな個人差があることを実感するだけに、教員へのサポートが重要との指摘には共感。しかも、授業以外の業務量が多いというのもまさに現実で、うちの近所の小学校の職員室の灯りも遅くまで消えることがありません。こんな先生たちに負担をかけずいかに使いこなしてもらうかがカギなのでしょう。

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