クラレの無電源で設営可能な防災用テント。自治体が注目するワケ
きっかけは静岡県。東海地震の備えから防災用品への感度高く
クラレは、ハイランドテクノ(栃木県那須塩原市)と共同で防災用テント「ジオダイナ」を開発した。生地シートと骨格フレームを一体にした構造で、一般的な防災用テントとして使われるエアーテントのように送風機などでテントを膨らませる作業がいらない。このため素早い組み立てが可能で、電源を確保する必要もない。災害時に迅速な対応を迫られる自治体などに注目されている。
開発のきっかけは静岡県からの依頼だった。東海地震などへの備えから、防災対策に熱心に取り組んでいる同県では、緊急時の備えとして無電源の防災用テントを必要としていた。さらに「ある程度の強度があって、簡単に設置できるテントが求められていた」と、クラレ繊維資材事業部機能テキスタイル部の今井公泰部長は振り返る。
開発にあたっては、生地のシートとフレームを一体型にし、軽量化を目指した。さらに生地自体を軽くするため、漁網やロープに使っていた高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」をテントに応用した。
同繊維は、同一重量の鉄の約7倍の引っ張り強度を持ちながら、水を吸いにくく、耐摩耗性にも優れる。これまで水産業以外にも火星探査機のクッション材など宇宙関連まで幅広い用途に採用されているが、テント向けで用いたのは今回が初めてだ。
開発したテントは16畳分の床面積と、高い屋根により、広々とした空間を確保した。本体重量は約100キログラムで、大人4人による持ち運びに対応した。
設置状況などにもよるが、30秒程度で設置が可能だ。杭(くい)打ちができないアスファルトにおいても、水のうを用いて設営できる。
今年5月から本格的に販売を開始。現在は依頼のあった静岡県のほか、岡山県にも納入した。来年には愛媛県に7セットを納入する見込みだ。
同部機能テキスタイル課の豊田恭郎担当課長は、「現在は自治体向けが中心だが、今後は企業にも積極的に提案していきたい」と意気込んでいる。
静岡県は自動車や精密機器、医薬品、製紙など、製造業の進出が盛んな地域。例えば、オフィスや工場・事業所に置いてもらい、非常時には従業員の安全確保や帰宅困難者の支援、地域貢献につなげることなども想定し、提案する。
防災用品では、このほかに避難場所などでバルブを開くだけで空気が充填されて使えるマットレスや、難燃ビニロンを使った作業服・膝掛け、かさばらずに保管できる給水袋なども扱っている。
今井部長は、「“転ばぬ先の杖(つえ)”ではないが、非常時に役立つ製品を提案していきたい」と語る。商業用テントなど、これまで培ったノウハウを生かしながら、防災製品の市場を切り開きたい考えだ。
(文=浅海宏規)
生地自体軽く大人4人で運搬
開発のきっかけは静岡県からの依頼だった。東海地震などへの備えから、防災対策に熱心に取り組んでいる同県では、緊急時の備えとして無電源の防災用テントを必要としていた。さらに「ある程度の強度があって、簡単に設置できるテントが求められていた」と、クラレ繊維資材事業部機能テキスタイル部の今井公泰部長は振り返る。
開発にあたっては、生地のシートとフレームを一体型にし、軽量化を目指した。さらに生地自体を軽くするため、漁網やロープに使っていた高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」をテントに応用した。
同繊維は、同一重量の鉄の約7倍の引っ張り強度を持ちながら、水を吸いにくく、耐摩耗性にも優れる。これまで水産業以外にも火星探査機のクッション材など宇宙関連まで幅広い用途に採用されているが、テント向けで用いたのは今回が初めてだ。
開発したテントは16畳分の床面積と、高い屋根により、広々とした空間を確保した。本体重量は約100キログラムで、大人4人による持ち運びに対応した。
設置状況などにもよるが、30秒程度で設置が可能だ。杭(くい)打ちができないアスファルトにおいても、水のうを用いて設営できる。
オフィスに提案、帰宅困難者の支援に
今年5月から本格的に販売を開始。現在は依頼のあった静岡県のほか、岡山県にも納入した。来年には愛媛県に7セットを納入する見込みだ。
同部機能テキスタイル課の豊田恭郎担当課長は、「現在は自治体向けが中心だが、今後は企業にも積極的に提案していきたい」と意気込んでいる。
静岡県は自動車や精密機器、医薬品、製紙など、製造業の進出が盛んな地域。例えば、オフィスや工場・事業所に置いてもらい、非常時には従業員の安全確保や帰宅困難者の支援、地域貢献につなげることなども想定し、提案する。
防災用品では、このほかに避難場所などでバルブを開くだけで空気が充填されて使えるマットレスや、難燃ビニロンを使った作業服・膝掛け、かさばらずに保管できる給水袋なども扱っている。
今井部長は、「“転ばぬ先の杖(つえ)”ではないが、非常時に役立つ製品を提案していきたい」と語る。商業用テントなど、これまで培ったノウハウを生かしながら、防災製品の市場を切り開きたい考えだ。
(文=浅海宏規)
日刊工業新聞2015年12月21日モノづくり面