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行政の後継者育成事業から南部鉄器の世界へ。美大卒の若き女性職人

及喜鋳造所、佐々木奈美さん。「くるみ」が鉄瓶の仕上がり左右
 南部鉄瓶を製造する及喜鋳造所。鉄瓶は48以上とも言われる工程を経て完成する。全て手作業。型に鉄を流し込む前の「縫い型」と呼ばれる補修作業では細かなヒビに「くるみ」と呼ばれる黒鉛を塗る(写真)。仕上がりを左右する大事な作業だ。

 佐々木奈美さん(31)は岩手県奥州市の後継者育成事業に応募し、2013年1月から修行を始めた。今年10月に及喜鋳造所の社員となった。3年目ながら、代表の及川喜徳氏(64)は「ほとんど一人でできるようになった」と、太鼓判を押す。

 美術大学出身の佐々木さんは、美術館勤務を経て、未知の世界に飛び込んだ。動植物をモチーフにした繊細な表現が評価を得ている。

 「作品が完成するたび、達成感と、人の手に渡る責任の重さを感じる」。独立して工房を持つまでには6年ほどかかるという。「今は師匠に助けてもらっているが、自分一人でできるようになりたい」と、南部鉄器の製作を続けていく決意は固い。
 <会社概要>
 ◇社長=及川喜徳氏◇所在地=岩手県奥州市水沢区羽田町宝生29◇売上高=非公開◇従業員=2人◇設立=1947年(昭22)
※日刊工業新聞では毎週火曜日に「モノづくり支える町工場の技」を連載中
日刊工業新聞2015年12月22日中小企業・地域経済面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
奥州市の取り組みは素晴らしいと思うが、職人や芸術家、起業家をも引きつけるために南部鉄器を産業としてどう育てていくかというストーリーも必要

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