トヨタが部品の過剰品質負担を是正へ、仕入れ先支援で得た手応え
トヨタ自動車が、自動車部品の過剰品質やそれに伴う生産面の負担を是正するため、仕入れ先メーカーに対する支援活動を強化している。トヨタの社員が取引先の現場に入りこみ、部品の微細な傷や作業の手順などを確認。性能への影響がない範囲で、検査基準の適正化などを行う。調達網全体でムダをなくし収益力向上につなげる。今後は担当する社員の数を増やすなどして、より多くの課題を抱える2次以降の取引先へ活動を広げたい考えだ。
取り組みは2017年末から始めた「品質・性能適正化特別活動(SSA)」で、19年からトヨタの社員が仕入れ先を直接訪問している。約50人のコアメンバーに加え、これまでに約1000人が実務に携わった。クルマ開発センターの志賀武文チーフプロジェクトリーダーは「『以前トヨタに却下された基準も受け入れられ、うれしい』との声もある」と手応えを示す。
例えばシート格納用の樹脂部品を手がける5次仕入れ先では、消費者から全く見えない部品だが、微細なバリや傷があれば廃却を実施。週5000個の不良品が出ていたが、条件の適正化で不良率は4分の1に減った。
トヨタの要求は「トヨタ品質」と呼ばれ、とりわけ厳しいことで知られる。これが製品力やブランドに寄与しているが、特に自社の製品が車両のどこに使われるのかを詳細に把握しきれない2次以降の取引先では、失注を恐れ“忖度(そんたく)”で過剰品質を招いているケースもある。
トヨタは年3000億円程度の原価改善目標を掲げる。生産効率化だけでなく、より広い範囲でのムダを削減したい考えだ。1次仕入れ先では9割がSSAを経験したが、2次まで含むと約6割に留まる。帝国データバンクによれば、グループ会社も含めたトヨタの取引先は、2次までだけで4万1427社。さらにその先の仕入れ先まで含め、一体的な活動を展開できるかが、今後の取り組みの焦点となる。
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