2016年の電子部品業界を読む

スマホは堅調だが“ポストスマホ”へ波乱の予感。再編が活発化?

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アルプス電気のカメラ用アクチュエーター
 電子部品需要のけん引役は2015年度もスマートフォン向けだった。米アップルの新モデル「iPhone(アイフォーン)6s/6sPlus」が大ヒットの前モデルに続き売れ行きが堅調だったほか、高速無線通信「LTE」の普及で端末1台当たりの部品搭載数が増加したため。懸念されていた中国経済減速の影響も「スマホ向けに関してはほとんどなかった」(部品メーカー首脳)。

 16年度もスマホ向け部品需要は底堅く推移しそうだ。アイフォーンの次期モデルは外側にカメラを2個搭載する「デュアルカメラ」と呼ばれる新機構の採用をはじめ、大幅なデザイン変更がある見通し。中国だけでなくインドや東南アジアといった新興国市場で、高速通信に対応する端末の普及が始まることも見逃せない。

 こうした端末の進化を支えるカメラ用アクチュエーターや高速通信に欠かせない表面弾性波フィルターなどの高機能部品は依然、日系勢のシェアが高い。村田製作所の村田恒夫社長は今月開催した経営説明会で「16年度は1台当たりに搭載される部品の数が10―20%増える」と予想する。

 すでに来年度以降の部品需要を見据えた戦略投資を実行する企業も相次いでいる。TDKはルネサスエレクトロニクスの子会社が持つ山形県鶴岡市の半導体工場を取得することを決めた。アルプス電気は今期の設備投資計画を予定より76億円上積みし来年度に量産する新型デバイスの生産ライン設置に充てる。

 一方で、16年度は非スマホ市場をめぐる競争が加速しそう。自動車の電子化はもちろん、部品が多用されるモノのインターネット(IoT)の普及が現実味を帯びてきているためだ。中堅部品メーカー首脳は「あらゆる業界に有力な製品をタイミングよく売り込まないと生き残れない」と話す。

 成長市場を効率良く開拓するには1社単独ではなく、同業や異業種との連携が欠かせない。部品メーカーがしかけるM&Aが活発化する可能性がある。

IoT時代へ通信、センサー技術が強みに


 部品各社がスマートフォンの次に期待するのがモノのインターネット(IoT)。自動車をはじめ、あらゆるものがネットに接続し部品が多用されるようになるからだ。村田製作所の村田恒夫社長は「ネットにつながるデバイスは2020年に500億個に達する。通信やセンサーで自社の強みを生かせる」と市場の広がりに期待する。

 実際、今年から各社のIoT関連の取り組みが本格化した。特に目立ったのが異業種やベンチャー企業との連携。村田製作所は福井県鯖江市のメガネメーカーなどと開発したデザイン重視のメガネ型ウエララブル端末に超小型のスイッチモジュールを提供。TDKはネット検索大手の中国・百度(バイドゥ、北京市)が開発した油分や塩分濃度などが測れる箸「スマート箸」向けに、小型無線通信モジュールを供給した。TDKの担当者は「箸の先端に入る部品が他になかったことが採用の決め手になった」と明かす。

 異業種やベンチャーが部品メーカーと連携する事例が増えているのは、部品各社が顧客のアイデアを形にできる超小型部品を持っているため。部品サイズが小型であればあるほど狭い場所に組み込むことが可能で、日常にあるさまざまな製品に搭載しやすくなる。

 商用化に欠かせない生産技術などを持ち、製品開発を側面支援できる強みを持つことも背景にある。アルプス電気はベンチャーの16Lab(神奈川県鎌倉市)とジェスチャーで家電を操作できる指輪型ウエアラブル端末「OZON(オズオン)」を共同開発。その際、部品だけでなく量産用の製品設計や生産技術を提供。開発期間短縮に大きく貢献した。

 IoTに商機を見いだす異業種やベンチャーは今後さらに増えるだろう。部品各社はこのような”新たな顧客“に対してどのような製品開発支援を提供していけるのか。自社の部品を拡販し、スマホの次の収益源を作っていく上で重要なポイントになりそうだ。
(文=下氏香菜子)

2015年12月17日/18日 電機・電子部品

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

ミネベアとミツミ電機が2017年4月をめどに経営統合する。ミネベアの精密加工、金型製造技術とミツミ電機の無線技術を組み合わせ車載部品などの製品力を高めるという。ミネベアの貝沼社長は「ミツミ電機には1000人超の設計技術者がいる。連携することで一挙に技術力を高められる。売上高1兆円、営業利益1000億円強を早期に達成したい」という。ミツミの森部社長は「(任天堂向けの)ゲーム機器用部品は厳しいが、車載向けなどは堅調。ミネベアの製造技術を生かし競争力を底上げしたい」と話している。モジュール化対応に向けた中堅メーカーを飲み込む再編がもっと起こりそう。

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