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紙おむつの需要を取り逃すな!三井化学が原料増産へ

日系3社、品質で高い評価。まだまだ能力増強続く
 三井化学は高級紙おむつなどに使う高機能不織布の年産能力を2020年度までに現状比3割増の12万4000トンに高める検討を始めた。17年度下期に三重県四日市市にあるグループ会社の年産能力増強を内定したが、生活の質を求めるようになった中国や東南アジアでの高級紙おむつ需要の増加を背景に19年には生産が追いつかなくなる見通し。さらなる増強で紙おむつメーカーへの供給強化に備える。

 現状の年産能力は9万4000トン。四日市(年産能力4万9000トン)、タイ(同3万トン)、中国・天津(同1万5000トン)の3拠点で生産している。柔軟性や収縮性に優れた高級紙おむつ用高機能不織布でアジアシェア約5割を持つ。

 訪日外国人による乳児用高級紙おむつ需要増に対応するため、四日市の年産能力を18年3月までに現状比1万5000トン増の6万4000トンに高める方針を決めた。

 さらに20年度までに3拠点のいずれかで年産能力を1万5000トン高める検討に入った。双方の増強が実現すれば投資額は120億円程度となる見通し。

 日本衛生材料工業連合会によると、14年の乳幼児用紙おむつ生産は前年比12%増の約120億枚。15年は訪日外国人の大量購入が続き、同20%近い伸びが見込まれている。

 円安が続けばこの需要増が当面続くほか、中国でも紙おむつの輸入関税を7・5%から2%に引き下げたことで日本製の紙おむつ需要増が見込める。生活の質向上が続く中国や東南アジアをけん引役にアジアの紙おむつ需要は20年までに年率8%伸びる見通し。肌触りが良い高級紙おむつ市場も同10%弱伸びる見込みだ。

ファシリテーター・峯岸研一氏の見方


 三井化学グループが紙おむつ向け不織布の増能力に向かいますね。紙おむつ向けポリプロピレン・スパンボンド(PP・SB)を生産する日系メーカーは、三井化学グループと東レグループ、そして旭化成グループの三社。三社はスパンボンド法をベースにそれぞれが独自製法で生産数量を拡大しています。
<続きはコメント欄>
日刊工業新聞2015年12月18日 素材面
峯岸研一
峯岸研一 Minegishi Kenichi フリーランス
 その中で日本国内生産の最大手が三井化学グループです。三井化学グループは、PP・SBでいち早く紙おむつ向けへスペックイン、サイドギャザー(尿漏れ防止)からバックシート(外側)へ採用範囲を広げています。三井化学グループの強みは、原料のポリプロピレンから不織布までの一貫生産、不織布と通気性フィルムとセットでの生産、そしてポリプロピレンとウレタンを合わせた適度な伸縮性とソフト性です。紙おむつは、国内は介護向けを含めた大人用、中国を含めたアジア地区では生活水準の向上による子供用おむつの需要増が続いています。一方、PP・SBは需要増とともに薄地化(低目付け)、機能性向上など品質へのニーズが高まっています。品質面で三井化学グループを含めて日系三社の評価が高いだけに、三社の増能力の動きが続きそうです。

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