名称変更も…「工業高校」改革に乗り出す東京都の狙い

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都立町田工業高校では日本IBMなどの協力により、IT人材を育成する教育プログラムを実施している

東京都が工業高校改革に乗り出す。デジタル技術の進展や産業構造の変化を踏まえ、モノづくり技術はもとより、自ら課題を見いだして解決する力やITスキルを習得させることで、産業界が求める人材ニーズに応える狙いだ。2023年度には都立の「工業高校」の名称変更も予定している。(編集委員・神崎明子)

「東京の産業基盤を支える人材を育成してきた工業高校は、DX(デジタル変革)人材を輩出する新時代の学校へと生まれ変わる」。小池百合子知事は11月末、こう表明した。現在、20の都立工業高校があるが、将来像を示し、実現に向けた施策を盛り込んだ戦略を年度内にまとめる予定だ。

これまでに明らかになった改革の方向性は、「技術の力で新たな価値の創出や課題解決を目指す力を育む学校」。創造的な活動の基盤となる基礎学力の向上やITスキルの習得はもとより、先端技術や社会のニーズを吸収するため、企業との接点を深めることに力点が置かれている。企業や大学の施設を活用した学習にも力を入れる方針だ。

教育改革の必要性は、産業界も積極的に発信している。経団連は20年に「ソサエティー5・0に向けて求められる初等中等教育改革」と題する提言を二度にわたり公表。職業教育を主とする高校の専門学科をめぐっては「就職先とのミスマッチが起こらない人材を育成するには、高校でも産学連携を進める必要がある」と指摘。一例として、産業界のニーズに応えるカリキュラム開発や、企業関係者などが高校生にアドバイスする機会の創出、最新設備の共同利用などを挙げている。

日本IBMは都教育委員会などと協定を結び、IT人材を育成する教育プログラムを実施中。今回の都の改革構想はこうした産業界の動きと歩調を合わせるものだ。

一方で難しいのは、さまざまな関係者が連携しながら新たな価値を生み出す「協創」という社会の潮流にどう応えるか。都の改革案には「チームで働く力の育成」「日々の技術の進歩を楽しみながら、創意工夫により課題解決や新たな価値の創出に貢献することが求められる」といった文言が踊る。これらはまさに産業界自身が次なる収益源を求めて試行錯誤するテーマだ。

長らく生産現場を支えてきた工業教育の役割や伝承してきた技能、ノウハウを大切にしつつ、これからのモノづくりをどう担うのか。今回の改革はこの先の日本の産業競争力の行方にも直結する。

日刊工業新聞2021年12月7日

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