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非常識に挑んだ大林組「海水練りコンクリート」はどうやって生まれたか

きっかけは天然岩塩と放射性廃棄物処分場
非常識に挑んだ大林組「海水練りコンクリート」はどうやって生まれたか

相馬港の消波ブロックに採用

 「最初はまともに扱われなかった」。大林組の新村亮生産技術本部技術第一部上級主席技師は、海水練りコンクリートの開発を手がけた2009年頃をこう振り返る。コンクリートの専門家から”常識外れ“と言われたこともあった。海水を使ったコンクリートはすぐに固まり施工しにくい、長期的な強度がないなどの課題がある。塩分が鉄筋コンクリートの鉄筋を腐食することも知られている。

 もともとは当時の土木担当専務が、水を通さない性質を持つ天然岩塩が米国で放射性廃棄物処分場に利用されていることに着目。天然岩塩に匹敵する人工岩塩をつくるため、海水で練ったコンクリートづくりに取り組むよう促したのがきっかけだ。「アングラ的に試験を始めた」(新村氏)が、コンクリートの強度が良くなり遮水性も高まるなど「けっこう面白い」(同)。1年後には専門家の好反応も得て、実用化への手応えをつかんだ。

 同コンクリートには高炉スラグの微粉末や石炭火力発電の副産物であるフライアッシュ、特殊添加剤を配合し、所定の性能が出るように工夫した。その成果が実り、13年に福島県相馬港の災害復旧工事の消波ブロックで初めて採用された。新村氏は「時間がかかったがきちんとできて良かった」と話す。2件目は15年にJFEスチール東日本製鉄所千葉地区構内の舗装コンクリートで適用した。

 「いかに使ってもらうかが一番苦労した」(新村氏)という難産の商品だが、さまざまな用途展開の可能性が広がっている。まず、真水が入手困難な離島や海洋・港湾工事での利用だ。海外での利用も期待できる。開発の発端となった放射性廃棄物処分場への適用も視野に入る。補強材の使用で鉄筋コンクリートへも適用可能だ。

 「常識にとらわれず面白いなと思い、やってきた。トップが理解してくれたことが大きかった」(同)。自由な発想から新しいモノづくりが生まれた。
(文=村山茂樹)

※同技術は「第6回ものづくり日本大賞」(政府主催)で内閣総理大臣賞を受賞
日刊工業新聞2015年12月15日 建設面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
建築技術ではさすが国内トップの開発力。ぜひ実ビジネスに生かしてほしい。

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