首相、3000万人宣言!JAL大西会長が語る「観光立国」への道

持続可能へ「奥深さ」を追求せよ

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日本航空大西賢会長
 日本経済の元気を取り戻す施策のひとつが「観光立国」の実現だ。ここ2年で訪日外国人旅行者(インバウンド)は急増、「2020年・2000万人」という大きな目標が視野に入ってきた。旅行者数および旅行消費が予想をはるかに上回るペースで伸長する中、これからの観光に不可欠なのが「持続可能性」。サステイナブルに成長し続けることが観光立国づくりの要諦である。

 持続可能性を実現するために、我々は何をすべきか―。ポイントは三つある。ひとつが受け入れ態勢の整備だ。誰もが予想しなかった急激な伸びに対し、日本として受け入れ態勢が追いついていない。具体的にはホテルの不足、バスなどの2次交通の脆弱(ぜいじゃく)性がボトルネックとして顕在化しているほか、通訳の不足、病気などのトラブル対応を含めたソフトインフラも不十分と言える。ソフトインフラはなかなか数字で現しにくいが、データとして見えない部分を早急に強化する必要がある。観光の「奥深さ」を追求したい。

 二つ目が、世界における観光の最新事例やベストプラクティスに触れることだ。その点で言えば、絶好のチャンスが到来している。日本が25年ぶりに国連世界観光機関(UNWTO)の理事国入りを果たしたからだ。この結果、いくつかの国際会議が日本で開催されるが、最大の利点は世界の観光のプロたちの声に、じかに耳を傾けられること。最新の観光情報に触れ、ベストプラクティスを会得する好機である。東京五輪・パラリンピック開催の20年に向け、絶好の準備期間となるだろう。

外から日本がどう見られているか、冷静な分析を


 三つ目が「客観性」の確保だ。海外から日本はどう見られているかを冷静に分析する必要がある。重要なリポートを徹底的に分析し、長所と短所をあぶり出さねばならない。ダボス会議で知られる世界経済フォーラムが発表した11年の「旅行・観光競争力指標」では、日本人はビジネスの対象である「お客さま」に対しては圧倒的なホスピタリティーを発揮する一方で、お客さまと認識されない外国人に対しては触れ合いを持とうとしないとの報告がなされている。こうした長所と短所を客観的に分析し、お客さまの視点でサービスを提供していくことが真の観光立国実現の本質だ。一時的なブームで終わらせることなく、観光の持続可能性が今こそ問われている。

首相「次は3000万人だ!」


 安倍晋三首相は14日、東京都内で開かれた内外情勢調査会で講演し、1年間に訪日する外国人の数に関し、「次なる目標は3000万人だ」と表明した。首相は「観光立国を進めることが、地方創生につながる」とも強調した。

11月も過去最高


 日本政府観光局(JNTO)が16日発表した11月の訪日外国人数は、前年同月比41・0%増の164万7600人になった。1―11月の累計では前年同期比47・5%増の1796万4400人となった。11月としては、過去最高だった14年(116万8427人)を上回った。11月はマレーシアやフィリピンの学校休暇で訪日旅行者数が伸びたほか、紅葉観賞の訪日需要も高く、大幅な増加につながった。

 国や地域別では、中国が前年同月比75・0%増の36万3000人で、2月から市場別で10カ月連続トップとなっている。中国はクルーズ船の増加や航空座席供給の拡大で、引き続き伸びた。2位の韓国は同50・5%増の35万9800人、3位の台湾は同25・4%増の29万6500人、4位の香港は同53・4%増の13万800人。中国と韓国の差が3000人程度と前月から縮まったものの、上位4カ国の顔ぶれに変動はなかった。

 そのほか、ロシアを除く19の国や地域で、11月として過去最高となった。タイ、シンガポール、マレーシア、インド、豪州、米国、英国、ドイツの8カ国が11月までの累計で14年実績を上回った。15年累計が14年実績を上回った市場は、中国や韓国などを含め、19の国や地域となった。

 政府は訪日外国人の年間目標を「2000万人」としているが、今年1―10月の訪日外国人数が1600万人を超え過去最高を記録するなど、達成のめどが立ちつつあることから、目標の上方修正を検討していた。



2015年日刊工業新聞12月16日付1面

COMMENT

神崎明子
デジタルメディア局
編集委員

記事中では、訪日外国人旅行者について「『2020年・2000万人』という大きな目標が視野に入ってきた」とありますが、まさに安倍晋三首相が、次なる目標について「3000万人」を掲げました。訪日外国人観光客の需要を全国各地が広く取り込めるかどうかが、経済再生のカギを握ります。

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