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ルンバの産みの親が語った「IoTでロボットはよりパワフルになる」

ロドニー・ブルックス氏(米リシンク・ロボティクスCTO)に聞く
ルンバの産みの親が語った「IoTでロボットはよりパワフルになる」

ロドニー氏はロボットの未来は「協調と高度化の両立だ」とする

 米アイロボットの創業者にして、掃除ロボ「ルンバ」や偵察ロボ「パックボット」を世に送り出したロドニー・ブルックス氏。現在は米リシンク・ロボティクスCTO(最高技術責任者)を務める。掃除ロボのように機能を絞ったシンプルなロボットは費用対効果が高く、世界的ヒットになる中、IoT(モノのインターネット)の進展でロボット多機能化の道が開けるのか。ロボット産業化に通じた同氏に課題と展望を聞いた。

 ―長年、ロボットの汎用性と専用性のバランスが課題でした。機能を絞ると人が使う道具と競合し、多機能を盛り込むと開発が急激に難しくなります。
「ヒューマノイドのような汎用ロボはまだまだ研究段階だ。次の10―20年は目的ごとに特化した専用ロボが中心になるだろう。ルンバや自動運転車などが例だ。だが30年前から電子機器は一つのデバイスに一つの機能しかなかった。たった5年でスマートフォンは多機能化した。ロボットも同じ道をたどるだろう。ただロボットの製造は格段に難しい。汎用ロボを5―10年内に実用化するのは厳しいだろう」

 ―スマホはアプリで機能を追加できます。ロボットも同じモデルは可能ですか。
 「コミュニケーションロボは専門でないため言及できない。ただロボットに何か作業させるには『つかむ』『吸い込む』など物理的な制約がある。これが専用治具やロボットの仕様を決めてしまう。掃除ロボでは吸引力と掃除面積がジレンマだ。パワーを上げれば電池が保たない。だが多目的なロボットは可能だ。ドローンは撮影機能だけで橋やプラントなどの点検に使える。当社の単腕ロボ『ソーヤー』は工作機械を人のように使いこなす。工作機械のドアを開けてワークをセットし、スタートボタンを押す。工作機械を替えれば幅広い加工が可能だ」

 ―IoTがロボットにもたらす影響は。
 「IoTでロボットはよりパワフルになる。ソーヤーはソフトウエアプラットホームを提供する。ソフトが進化の推進力になる。ルンバの最新機はネットにつながり、カメラを搭載している。現在は掃除しかしていないが、カメラの用途は幅広い。近い将来、部屋の中で誰かが動いていればルンバが報告するようになるだろう。離れて暮らす両親の見守りや外出中の警備など、万能ではないがシンプルなロボットでもできることは広がる。休暇旅行中に侵入者の報告を受けてもバッドニュースでしかないが」

【記者の目/協調と高度化、両立への解】
 ロドニー氏は研究者の頃から事業化に熱心だ。台湾の電子部品工場を巡り、原価構造を調査するなど逸話は多い。ルンバの成功は機能を絞り込んだことだ。IoT本格化を迎え、複数の単機能ロボを協調させ高度なサービスを作るか、汎用ロボのサービスを高度化するか聞くと、その答えは両立だった。具現化のひとつがソーヤーということだ。
(聞き手=小寺貴之)
日刊工業新聞2015年12月18日 ロボット面
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
ロボットを事業化するという明確な目的があったからこそ、単機能(専用ロボ)から多機能(汎用ロボ)という技術展望を描き、そこに沿った製品を投入してきたのだろう。日本のサービスロボットにはその視点が足りていなかったという点は否めない。10年、20年後に汎用ロボットが主流になれば、これまで人型ロボットなどで日本が培ってきた技術が強みになるかもしれない。そのときまでロボット分野で存在感を出していられるかどうかが課題だ。

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