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クボタが100億円提供、東大と創成目指す「ビオループ」ってなに?

クボタが100億円提供、東大と創成目指す「ビオループ」ってなに?

クボタは協創事業に100億円を拠出する(藤井東大総長〈左〉と北尾クボタ社長)

東京大学とクボタは、産学協創協定を結んだ。100年後の地球に向けて食料・水・環境の3分野で、自然生態系と人工循環系を結びつけた「ビオループ」創成を目指す。多面的な議論によるビジョン共有から共同研究、同社の世界拠点を活用したインターンシップ(就業体験)や社員を含めた人材育成、ベンチャー創出に取り組む。同社が10年間で100億円を提供する。

東大は循環型経済のサーキュラーエコノミー、生物科学による経済活動のバイオエコノミーなどの研究・教育で実績がある。クボタは水道管、農業機械、焼却炉などの事業での社会実装の経験が豊富だ。双方の知を融合し自然共生、脱炭素化、循環型社会の具現化を図っていく。

研究テーマ例は食料なら、栽培計画や作業機械に人工知能(AI)を活用するスマート農業が挙がる。循環プラントのモノのインターネット(IoT)による遠隔管理、廃棄物からのリンや金属の回収・再生もある。

東大での会見で藤井輝夫総長は「3分野のループと(人材育成の)コモンズを、ともに議論してビジョンをつくっていく。我々が持つ農場、牧場、演習林、水産試験場なども活用できる」と強調。北尾裕一クボタ社長は「農業機械などで課題解決に取り組んできたが、社会全体に関わるには東大のさまざまな学知と合わせないと生き残れない」と決意を語った。

日刊工業新聞2021年12月1日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
新たな概念を提示する時の造語づくりは難しい。ぴたっとハマると社会で広く使われて、「この概念は▽▽が提唱して始まったんだよね」と高評価だが、「何の意味だかわからない」と評されていつまでたっても知られないまま、ということも少なくない。今回は、地球の生態系の自然な形を大切にしながら(自然生態系=ビオ)、人の手や産業が関わって負の部分を正に変えていく資源や水、エネルギーの循環・再生(人工循環系=ループ)をつなげた概念での造語だ。個人的には「いいな」と感じるが、水辺などの生態系で使われる「ビオトープ」と似ているのが難点か。ちなみに東大は国際的な場では「トウダイ」ではなく、「U-Tokyo」(ユートウキョウ)、「UT」を使います、とだいぶ前に打ち出すも、浸透していなかった。が、11月発表の中期ビジョンの名を「UTokyo Compass」にするなど、藤井総長の元で再び多用しよう、と考えているようだ。

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