Sansanがあえてオフィス前提の働き方に軸足を置く理由

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管理部門を集約した執務スペース

新型コロナウイルス感染症が国内で落ち着きを見せる中、Sansanは11月にオフィスを中心としつつ、出社とリモートを組み合わせた新たな勤務形態に移行した。これに先立つ10月、東京都渋谷区の本社3階に、人事や総務などの管理部門を一カ所に集約するとともに、主に採用活動で利用する会議室11室と35人収容可能なセミナールームを設置。対面での採用説明会や研修が可能になった場合の利用も想定する。コロナ禍に見舞われても、あえてSansanがオフィスを前提とした働き方に軸足を置く理由を探った。

執務エリアを丸見えに

東京メトロ表参道駅近く、青山学院大学のキャンパスから国道246号線を挟んだ向かいのビルにSansanの本社はある。同ビルの3階でエレベータを降りると、ガラス張りの執務フロアが見渡せる。向かって右側には、同じくガラス張りの会議室が九の字型の通路に連なる。各会議室には太陽系の惑星などにちなんだ名称が付けられている。

同社オフィス戦略部の白鳥喜章氏は、「採用段階で応募者が面接に行く途中、執務エリアが丸見えになるようにガラスを多用した。さらに当社が横のつながりをもちつつ、自由な働き方をしているところを体感してもらいたい」と、“スケルトン構造”の狙いを説明する。実際に、出入口寄りのスペースにはソファやキャンピングチェアなどを配置したフリースペースがあり、社員が思い思いの格好で仕事をしている姿が目に付く。

管理部門をワンフロアに集約したメリットはほかにもある。「バックオフィス部門をすべて集約することで総務、法務、人事を訪れた社員どうしがすれ違ったりする。そこから『やあ、久しぶり』というように、偶然の会話から事業シナジーが生まれるといったことを狙っている」(白鳥氏)。ガラス越しに知り合いを見つけて、話しかけ行くといったコミュニケーションも生まれている。

Sansanは2020年以降、一部のメンバーをのぞいてほぼオンラインで業務を進めてきた。今秋になると「コロナが落ち着いてきて、私達が大事にしていることは人と人との出会いの可能性を最大化し、そこからイノベーションを起こしていくことだ」(大間祐太取締役CHRO)と思い起こした。そこで、「経営として、皆が集まれるオフィスは大切な場所であるということを再定義した」(大間取締役)。

現在、同社はエンジニアやデザイナー、クリエイターは週1日の出社か、週3日の出社かを選択できる。開発業務などをリモートワークで行うことにより、開発・制作に集中できるようにしている。一方で、営業やコーポレート部門といったビジネス職は週3日の出社業務を基準とし、残りをリモートワークにすることが可能だ。ビジネス職は業務上、対面による連携において生産性の向上が一定認められることが理由だ。

偶然の会話にビジネスのヒントがある

オフィスに社員が集うメリットについて、大間取締役は「いろいろな職種の人間が偶然会話する中で、ビジネスのヒントがあったりする。また、営業が目標を達成して喜んでいるところを、エンジニアや人事などが見て、『私も頑張ろう』となったりする」と説明。「そういったコミュニケーションや雰囲気が作っていくものは、事業成長に資するものとして私たちは大切にしたい」と、大間取締役は力説する。

左からオフィス戦略部の白鳥喜章氏、取締役CHROの大間祐太氏

同社は働き方改革とあわせて、創業以来の事業部制を廃止し、ビジネス統括本部、プロダクト組織、技術本部に再編した。従来、クラウド名刺管理サービス「Sansan」やクラウド請求書受領サービス「Bill One」などのプロダクトごとに、いくつもの組織が混在。そこにそれぞれ営業、開発、カスタマーサクセス(CS)などがある状態だった。

今回、ビジネス統括本部に営業・マーケティング機能を、技術本部へプロダクト開発に所属するエンジニアとデータ統括組織の研究開発機能をそれぞれ集約した。プロダクト部門はサービスの機能開発や、売り上げを伸ばしていくための戦略立案などを手がける。組織改編によって、営業力や開発力の強化、サービス力の強化を見込んでいる。足元の人材採用では、エンジニアやデータサイエンティストなど技術職の採用も積極化している。(取材・宮里秀司)

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