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「指定国立大」10校目に九州大、指定は一区切りの理由

「指定国立大」10校目に九州大、指定は一区切りの理由

九州大学公式サイトより

文部科学省は世界最高水準の教育・研究を目指す指定国立大学九州大学を指定した。同大は社会変革に向けた総合的な知の結集を掲げ、「脱炭素」「医療・健康」「環境・食料」を重点分野に設定する。今後は強みとするデジタル変革(DX)の先進性を生かし、データ駆動型の教育・研究・医療の実現に必要なデータのマネジメントとガバナンスの構築に取り組んでいく。指定国立大学としては同大が10校目となる。

同大は人文社会から理学、工学、農学、医療・保健、芸術まで含む「総合知で社会変革をけん引する大学」での知の結集を掲げる。財務基盤の強化では総長のリーダーシップの下、大型共同研究の獲得や大学発ベンチャーによる知財収入の拡大などを計画している。

重点3分野とデータ駆動型の活動強化と合わせ、これらを推進するため「未来社会デザイン統括本部」と「データ駆動イノベーション推進本部」を新たに設ける。大学のポテンシャルを最大限生かした戦略的な取り組みを推進するため、これら全体を統括する体制を構築する。

文科省は指定国立大に10校程度を選定することを明らかにしていた。政府による10兆円の大学ファンドの支援対象となる「世界と伍する研究大学」(仮称・特定研究大学)のうち、国立大については指定国立大から選ばれる可能性が高いとみられている。

関連記事:東大は「指定国立大学」へ申請できたのに、北大や九大はなぜ要件未達?

日刊工業新聞2021年11月25日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
九大は前回の申請時は、「部局別に出てきた計画を綴じただけ」といった、総合大学にありがちな散漫な計画書だったと伝え聞く。その時に筑波大学や東京医科歯科大学に破れた(両大学は指定を勝ち取った)ことから、旧帝大としての意地からも「2度、落ちるわけにはいかない」という緊張感だったに違いない。「指定国立大はこれで一区切り、しばらくは次の指定の申請の機会もない」(文科省・国立大学法人支援課)。この制度は申請のハードル(足切りの条件)があるためで、それを満たす大学が今のところこれきりだからだ。ちなみに九大は同制度の開始時には、条件が満たせず申請もできなかった。今後はこの中から、世界と伍する研究大学(仮称・特定研究大学)にどこが選ばれるかが、注目となるだろう。

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