コロナ禍でキャリアに危機感、中年サラリーマンへの処方箋

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新型コロナウイルスの感染拡大は、働き方を大きく変容させた。在宅勤務が普及し、これまで通勤していた時間を自己啓発に活用する人が出てきている。コロナ禍による所属企業の業績悪化などを背景に、会社に依存せずに自律したキャリアを形成する必要性を意識せざるを得ないといった理由が後押ししているようだ。こうした変化は、年代や男女によって違いはあるのだろうか。

また、自律したキャリア形成の必要性は理解していても、その具体的な方法がわからないという声は少なくない。そこで日刊工業新聞社とYahoo!ニュースは、コロナ禍がキャリア観に与えた影響について、アンケートを通じて年代や男女の別による違いを明らかにするとともに、自律したキャリアを形成する方法などを識者に聞いた。

「キャリア観に変化あり」46.8%

アンケートは10月4―5日、全国にいる20-59歳までのYahoo!JAPANユーザーを対象に行い、5000人から有効回答を得た。回答者の男女比はおおむね6対4で、年代は40代が39%で最も多く、50代29%、30代22%、20代11%と続いた。

まず、「コロナ前後でキャリア観に変化はありましたか」という問いには、「どちらかといえばある」(34.1%)と「ある」(12.7%)の回答の合計が46.8%を超えた。年代別に見ると、20代が「どちらかといえばある」(36.4%)と「ある」(18.2%)の合計が54.2%で最も多く、それに30代が50.0%で続くなど、若年層ほどキャリア観が変化した人が多かった。ただ、40代でも46.1%、50代も41.3%に上った。

キャリア観が変化した人にその理由(複数回答)を聞くと、「外出機会が減り、ライフスタイルが変わったため」が17.9%でトップだった。それに「所属する業界の先行き不安」(17.8%)「働き方を見直す内省の時間が増えたため」(16.6%)「リモートワークの導入など働き方の変化」(16.1%)、「所属する会社の先行き不安」(16.0%)が続いた。

この理由を年代別に見ると、30代と40代は所属する業界や会社の先行き不安を上げる人が多かったが、20代と50代では自分のライフスタイルや働き方の変化を上げる人が多い傾向があった。

また、男女別では、男性が業界や会社の先行き不安に関する選択肢が上位を占めた一方、女性は働き方の変化に関する回答が上位になるなど、対称的な結果だった。

キャリア観の変化の具体的な内容(複数回答)は「ワークライフバランスを大切にしたい」(75.2%)や「働く時間を短くしたい」(48.0%)など働き方の改善を上げる意見に続き、「所属する会社に依存せず自分自身でキャリア形成する必要があると感じた」が47.6%で3番目に多かった。

年代別では、全年代で「ワークライフバランスを大切にしたい」がトップだったが、20代と30代はそれに「所属する会社に依存せず自分自身でキャリア形成する必要があると感じた」が続き、「働く時間を短くしたい」が3位だった。40代と50代は2位が「働く時間を短くしたい」、3位が「所属する会社に依存せず自分自身でキャリア形成する必要があると感じた」の順番だった。

また、「キャリア観の変化に伴って具体的に行動していますか」という問いには、「行動している」が14.7%となった一方で、「行動していない」が57.4%で過半を占めた。行動していない理由を聞くと、「何をすればよいかわからない」が39.6%で最多。「気力がない」(27.9%)と「お金がない」(21.4%)がそれに続いた。行動していない理由の最多回答はすべての年代で「何をすればよいかわからない」だった。

なお、行動している人にその内容(複数回答)を聞くと、「副業・兼業を始めた」(76.7%)や「資格の勉強を始めた」(76.1%)が上位を占めた。「移住した」も5.5%いた。

自律したキャリアを形成する方法

年代によるキャリア観の違いや自律したキャリアを形成する方法などについて、キャリア研修を数多く手がけるキャリア心理学研究所の宮城まり子代表に聞いた。

-コロナ禍による個人のキャリア観の変化をどのように見ていますか。
 よい意味で自分のキャリアに危機感を感じている人が増えたと思います。会社に依存せず、自律的にキャリアを形成し、社外の労働市場においても価値ある人材になりたいという人は多いです。環境変化が激しく、コロナ禍の影響で業績が落ちたり、早期退職者を募集したりという動きもあり、会社での安定・安心が保証される時代ではなくなりましたから。特に在宅勤務が増えたことで、これまでの通勤時間を自己啓発に活用し、中小企業診断士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(FP)、などの資格に挑戦する人が増えた印象です。

-アンケートで「キャリア観が変化した」と回答した人を年代別に見ると、20代が54%で最多でしたが、40代や50代でも40%を超えました。
 若い人もそうでしょうが、キャリアにより危機感を感じやすいのは40-50代の中年期でしょう。中年期には所属する会社で今後どこまで昇進できるかの見通しがほぼ見えてきます。そこでこれ以上の昇進は難しいと判断すると、ただのサラリーマンで終わらず、資格や専門性などアピールできる独自の武器を持ち、自律的にキャリアを形成していきたいと思うのでしょう。中年期は若年層よりも真剣に向き合っているイメージがあります。

キャリア心理学研究所の宮城まり子代表

-中年期からの取り組みでも自律的キャリア形成は可能なのでしょうか。
 もちろん間に合いますよ。定年を70歳まで引き上げようという時代に、40代からキャリア開発に先行投資して自律的にキャリア形成をしておく人と、何も考えないまま定年を迎える人ではまったく違います。中年期から考え準備をしておくと定年を迎える頃に新たなキャリアチャンスにも遭遇できるでしょう。チャンスは準備ある人の所やってくるはずです。

-自律したキャリア形成のために、特に大事なことを教えてください。
 まず大切なものは「人脈」です。そのためには会社と家庭以外の「第三の場所」を作るといいでしょう。業界の研究会、異業種交流会などに参加して井の中の蛙にならず、いろいろな人と知り合うことからもキャリアは開けます。社会人大学院なども人脈形成の場になります。また、地域の子供のスポーツ活動の父母会など地域のコミュニティーにも多様な職業の方々が参加していて、そうした人とのつながりから偶然、セカンドキャリアが開けることもあります。

-アンケートでは、キャリア観は変わったが具体的に行動していない人が多く、理由として「何をすればいいかわからない」という答えが最多でした。自律的キャリア形成のためにまず何をすべきでしょうか。
 一歩でもできることからまず動くことです。その一歩は「美術館に行ってみよう」や「ボランテイアをやってみよう」など、必ずしも勉強とは限りません。つまり、自分の世界を外に広げる努力で、そこで誰かと遭遇したり、これまでにない活動を通して刺激を受けたりすることで、その次の一歩につながります。もし、その一歩の出し方がわからないのであれば、かつて中学・高校時代に取り組んでいたこと、大学で学んだことなど、土台があるものから再度始めるといいでしょう。

-一方で、20-30代前半の若い頃だからこそ、キャリア形成のために考えておくべきことはありますか。
 現在担当の仕事の質をワンランク高める努力をすることです。その結果、上司の信頼を得られれば、今より質の高いレベルの仕事が与えられるでしょう。特に仕事の基本を覚える時期は、与えられた仕のアウトプットをしっかり出すことが大事です。現在担当の仕事から、何が身につくか、どんな経験が得られるか、どのような人脈につながるかといった視点で考えれば、仕事には無駄な経験はひとつもありません。同時に3-5年後の自分をイメージして今から準備することを考えることも大切です。

ニュースイッチオリジナル

COMMENT

葭本隆太
デジタルメディア局DX編集部
ニュースイッチ編集長

「人脈がキャリアを作る」と力説する宮城さんは、地域コミュニティーへの参加も薦めておられました。確かに私の子どもが通う保育園の父兄も、大学の先生や庭のデザイナーをお務めの方など、その職業は多様性に溢れています。宮城さんの話を聞きながら、そういった方と積極的に交流すると、自分の視野が広がるのかなぁと思いました。

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