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東京都中小企業知的財産シンポジウム【新事業創出/起業を支える知的財産戦略~“ひらめき”を成功に導く羅針盤~】

東京都中小企業知的財産シンポジウム【新事業創出/起業を支える知的財産戦略~“ひらめき”を成功に導く羅針盤~】

(株)シクロ・ハイジア代表取締役CEOの小林誠氏(中)、弁護士法人内田・鮫島法律事務所弁護士・弁理士の高橋正憲氏(右)、公益財団法人東京都中小企業振興公社常務理事兼東京都知的財産総合センター所長の荒井英樹氏(左)

知的財産の戦略的な活用は、中小企業の新規事業やスタートアップの独創的なビジネスモデルを成功へと導く「羅針盤」となる。産業構造の変化に伴い、新たな価値をともに生み出す「協創」の概念やオープンイノベーションが広がることからもその重要性が再認識されつつある。12月に都内で開催される知財戦略に関するシンポジウムに先だって、企業支援の最前線に立つ株式会社シクロ・ハイジア代表取締役CEOの小林誠氏、弁護士法人内田・鮫島法律事務所弁護士・弁理士の高橋正憲氏、東京都知的財産総合センターの荒井英樹所長がその意義や、知財戦略をどう構築するべきか語り合う。

【中小企業やスタートアップから寄せられる知的財産にまつわる相談は増加傾向にある】

荒井 東京都知的財産総合センターには年間7000件あまりの相談が寄せられますが、新規事業において知的財産を積極的に活用しようと考える企業が増えていると実感しています。一方で権利取得そのものが目的化してしまい、事業環境の変化に柔軟に対応できないケースも散見されます。私自身も経験がありますが、技術開発は軌道修正の連続。基本特許を確立した上で、製品化後に周辺特許で技術を補完していくケースもあります。

小林 私は経営や事業戦略策定支援の観点から知財戦略に携わっていますが、知財を武器にしたいという声は非常に多く寄せられます。一方で気がかりなのは、中小企業は往々にして「この技術を収益化したい」といった技術起点、あるいはシーズ起点で知財を捉える傾向にあること、また創業まもないスタートアップは知財をコストとして捉えがちな実情です。しかし、知財はビジネスモデルや事業戦略を支える経営資源のひとつです。だからこそ、未来への投資という意識で捉えてほしいと訴えています。

高橋 私が所属するのは、主として、知的財産やIT法務などを専門的に扱う法律事務所ですが、中小企業やスタートアップからの技術法務に関する依頼が非常に増えています。小林さんの「知財は事業戦略と一体で捉えるべき」のご指摘は企業の組織構造においても同感です。往々にして、特許は知財部門、契約書は法務部門、ビジネス戦略は経営者の判断と分断されがちですが、知財はいずれの部門とも密接に関わっており有機的に捉える必要があります。自社で足りない部分は、外部専門家の力に頼る選択もありうると思います。

(株)シクロ・ハイジア代表取締役CEOの小林誠氏

【経営戦略と知財戦略を一体に捉えることは企業成長につながる】

荒井 目標となる未来を定めた上で、ここから、いまなすべきことを考えるバックキャスティングの手法でも知財戦略は事業創出の支えになります。グーグルもアマゾンもひとつの特許が事業の原点ですが、おそらく、これによってどんな社会を実現するか綿密な事業計画とリンクさせながら巨大IT企業への変貌を遂げていったと推察します。だからこそ、ひとつの特許、最初の一步をどう生かすかが重要となるのです。

小林 いまのお話、私は「価値デザイン」という考え方で表現しています。その際、市場における自社のポジションや競合関係、研究開発や特許をはじめとする技術情報などを総合的に勘案した上でビジネスおよび知財戦略の道筋を付ける必要があります。今回のコロナ禍が象徴するように、急激な社会の変化に柔軟かつ強靭に対応する上でも、自社の技術やビジネスモデルを中長期的な観点で捉えて、新たな価値を創出していくことが企業の持続可能性にも直結します。

弁護士法人内田・鮫島法律事務所弁護士・弁理士の高橋正憲氏

【知的財産の重要性を認識した上で、具体的にどう踏み出すべきか】

高橋 まずはできるだけ早いタイミングで知的財産の活用の検討に着手することをお勧めします。特に技術開発においては、試作開発の前段階にあたる、いわゆるPOC(概念実証)のタイミングが将来を左右するようないい特許が生まれるケースが多い。この局面で、将来の契約方針や知財戦略の方向性を固めることはその後のビジネスの成否につながります。

小林 同感です。まさに知財戦略は先行投資です。もちろん社会の変化は不透明ですし、資金の関係からすべての研究開発の成果を特許出願することは現実的でないケースもあるでしょう。だからこそ、戦略的な権利化や活用について、さまざまな視点と経験を持つ専門家に相談してほしいですね。

荒井 そうですね。「これは特許になるな」という感覚はある程度、経験を積まないと分からない面もありますからね。加えて「協創」の時代における知財は、独占排他権というよりもさまざまな企業と協業を進める原動力としての色彩を帯びていることからも、自社の戦略を早い段階から明確にしておくことが欠かせません。

公益財団法人東京都中小企業振興公社常務理事兼東京都知的財産総合センター所長の荒井英樹氏

【協業をめぐっては、中小企業やスタートアップが大手企業との技術開発を安心して進められるよう政府は「知的財産取引に関するガイドライン(指針)」を策定した】

荒井 これを機に、中小企業が不当に不利な立場に置かれることなく、対等な取引関係構築につながればと期待しています。実務的な面から高橋さんは今回の指針をどう見ていますか。

高橋 開発委託や製造委託契約における知的財産権の取り扱いについて、契約書のひな型が公表された意義は大きいと受け止めています。大企業と、中小やスタートアップとの間では、企業規模による力関係や契約スキルに大きな差があることから、契約書の十分な吟味がされずに契約書が締結されてしまうこともありました。開発の成果として生まれた知的財産権の取り扱い等について、一定の指針が示されたことは歓迎すべきでしょう。こうした問題意識を関係者が共有することで、さらなるオープンイノベーションの弾みとしたいですね。

小林 ビジネスにおける契約交渉とは、さまざまな局面で生じる問題に対処すべく「落としどころ」を探るプロセスの積み重ねでもあります。中小企業やスタートアップの事業の行方を大きく左右しかねませんので、知財意識を持って臨むことが重要ですね。

荒井 今回のシンポジウムでは新事業創出に挑む企業事例や知財の効果的な活用についても議論を深める予定です。多くの方に今後のビジネスの参考にしていただきたいですね。

シンポジウム詳細
 東京都中小企業知的財産シンポジウム
 新事業創出/起業を支える知的財産戦略
 ~ “ひらめき”を成功に導く羅針盤 ~

 日 時:2021年 12月 8日(水)13:00~16:00
 開催方法:来場参加またはライブ配信視聴の選択ができます

 お申込み、シンポジウム詳細はこちらから

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