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“ゴーン改革”以来の大幅な方針見直し、日産が部品調達で入札取りやめの成否

“ゴーン改革”以来の大幅な方針見直し、日産が部品調達で入札取りやめの成否

部品各社と協業し次世代車の技術開発を進める(日産の栃木工場)

日産自動車は新車のモデルチェンジごとに実施してきた部品調達の競争入札を一部止める。骨格や内装など一部部品を対象に優先的に発注するサプライヤーを決め、複数世代にわたる長期取引関係の中で高機能化やコストダウンを検討する。発注の規模、期間が膨らみ、サプライヤーは経営資源を投入しやすくなる。競争入札や系列解体などでコストダウンを指向した“ゴーン改革”以来の調達方針の大幅な見直しとなるが、競争原理が働かず、効果が限定的になる恐れもある。

完成車メーカーは通常、新車のフルモデルチェンジ(全面改良)を5―10年程度のサイクルで実施する。日産は、一世代のみの新車の発注規模では投資回収が難しかった技術開発などを後押しするため、競争入札を一部止める。次世代車では素材などで足の長い開発が求められており、部品各社との協業を深めて性能や品質を磨く。

このほど取引先との協業を強化する枠組みとして「アライアンス・ストラテジック・パートナー(ASP)」を立ち上げた。車の骨格や内装といった主要部品以外に、物流などのサプライヤーを対象に選定を始めた。

日産から一定の評価を得た対象サプライヤーには開発中の新車だけでなく、次世代車の部品も優先的に発注する。複数世代に渡る新車の開発で取引関係を継続する意思を明示することで、部品メーカーが開発資源を投入しやすくする。

日産では元会長のカルロス・ゴーン氏が経営再建に本格的に乗り出した00年代以降、大規模な調達改革で原価改善を進めてきた。

ただ、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の潮流で自動車の技術開発が大転換期を迎える中、サプライヤー各社の専門性を最大限に活用する仕組みが必要と判断した。

次世代の新車開発を含め特定のサプライヤーに優先的に発注する取り組みは、連合を組む仏ルノーや三菱自動車も取り入れる。

選定する部品メーカーは3社でそれぞれ異なるが、車載用電池など共用する部品もある。個社の取り組みが3社連合の競争力底上げにつながるか注目される。

日刊工業新聞2021年11月8日

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