コロナ禍で意義が問い直される在留資格「特定技能」、活性化への課題と対策
新型コロナウイルス感染症対策として、政府が2020年に外国人の出入国制限を設けてから、日本にいる外国人の間で技能実習から特定技能に在留資格を切り替える動きが進んだ。コロナ禍にあって外国人の新規入国がほぼなくなり、人手不足の企業などが労働力を確保したいという需要があることから、技能実習が終わった外国人が特定技能に移行して引き続き日本にとどまるケースだ。
特定技能は19年4月に運用が始まった新たな在留資格で、現在は建設や造船など14業種で就労が認められている。技能移転による国際協力を理念とする技能実習とは異なり、特定技能は労働力確保を前提とした制度でもある。
出入国在留管理庁によると、21年6月末現在、外国からの中長期在留者数は252万3124人、特別永住者数は30万441人。これらを合わせた在留外国人数は282万3565人で、20年末に比べ6万3551人(2.2%)減少した。上位10か国・地域のうち、増加したのはベトナムとネパールの2か国だが、両国の増加率は微増にとどまっている。
BEENOS HR Link(東京都品川区)は、技能実習での就業や雇用、特定技能の拡大などを支援するシステム「Linkus(リンクス)」を事業者などに提供している。同社は8月、技能実習の定期巡回・実習日誌管理に対応できる機能をリンクスに追加した。これにより、技能実習から特定技能までを一通りオンラインで管理できるようになった。
同社の岡﨑陽介社長は、「技能実習においては、監理団体が定期巡回・面談を行うことが原則ルールとなっている。その対応をより簡易的に行ってもらえる機能を追加した」と説明する。実習日誌に関しては、受け入れ企業側で作成し、監理団体へ定期的に共有し保管をする義務があるため、その共有・保管をリンクス上で簡単に完結できるようにした。
特定技能をめぐっては、在留資格変更申請時に提出情報に差異が生じるケースがあり、特定技能を活性化する上で課題となっている。具体的には、技能実習の入国時に入管へ提出している経歴情報と、特定技能への資格変更時に入管へ提出する経歴情報が違っていることがある。
その場合は「入管から経歴詐称という判断をされ、在留資格を取得できない可能性が出てくる」(岡崎社長)という。こうした事態が起こると、外国人材本人と受け入れ企業など関係者全員が困ることになる。ただ、経歴詐称と言っても、送り出し機関の職員が勝手に外国人の経歴を変更しているケースもあるという。
また、同社は8月に有料職業紹介事業も始めた。岡崎社長は「特定技能自体がまだ思うように活性化していない中、少しでも優秀な人材と優良な企業にマッチングしてもらいたいと、ウェブ上と人材紹介の両軸で業界の活性化に貢献したい」と話す。
コロナ禍で外国人材の出入国が滞り、技能実習制度や特定技能の意義が問い直されている。こうしたなか、監理団体や登録支援機関、外国人材や受け入れ企業を支援する民間のサービス事業者は、試行錯誤を続けている。