ニュースイッチ

危機感の丸紅、イノベーションを生む人事制度改革の現在地

丸紅は2019年度から人事制度改革に取り組んでおり、今夏には管理職層を対象に等級制度「ミッションレーティング」を導入した。過去数年の積み上げ型評価から、ミッションの大きさに応じ等級や基本給を変え、1年ごとの成果で評価する仕組みに改めた。組織横断の連携を促進する報酬制度も取り入れ、イノベーションが生まれる組織作りに力を入れている。

「今、変革へと舵を切らなければ、社会変化を乗り切れない」と、人事部長の鹿島浩二執行役員は危機感をあらわにする。ミッションレーティングでは、例えば営業本部の場合、収益目標や新規事業の開発など、各人に期待する役割や目標を定める。ミッションを毎年度更新することで、社員の働きを活性化させ、新たなチャレンジを促す。

一方「誰にどのようなミッションを与えれば、組織の戦略実行力を高められるのか、経営層は突き詰めて考えることになる」(鹿島執行役員)と、人材活用の最適化にもつなげていく。

また、組織横断の横連携を促す報酬制度「クロスバリューコイン」を20年10月に導入した。専門知識の提供や情報共有などで他部署に貢献した社員にコインを支払う。1コインを1万円と換算し、賞与に反映する。

 さまざまな事業を展開する総合商社の丸紅としては縦割り意識を排除し、各社員が持つ知見やノウハウを共有して新たな事業創出につなげる狙いだ。  採用方法も見直し、21年度からは新卒や就業経験5年程度までの若手を対象に、入社後の部署・業務を明示して募集するキャリアビジョン採用(ジョブ型採用)を導入した。新入社員の「これをやりたい」という志に応えるとともに、採用におけるミスマッチを防ぐ。人事制度は適宜見直しており「走りながら直していく」(鹿島執行役員)ことで、時代の変化に対応する。
日刊工業新聞2021年10月5日

編集部のおすすめ