農業の病虫害対策を迅速に診断するAI活用法

AI新時代 #04

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AI病虫害画像診断システム開発に農研機構のスパコン「紫峰」を活用(画像は農研機構提供)

農業・食品産業技術総合研究機構は2018年に久間和生理事長直属の農業情報研究センターを開設し、農業向け人工知能(AI)研究に取り組んでいる。一般の人でも使えることを意識して開発しており、農研機構が農業情報サービス事業者向けに3月から提供している「AI病虫害画像診断システム」はその成果の一つだ。農業団体や農薬メーカーは各サービス事業者を介して病虫害画像診断サービスを構築し、生産者らに診断サービスを提供できるようにした。

熟練者の減少や経験の浅い新規就農者への対応として、病虫害対策を現場で迅速に診断できるサービスが期待されている。そこで農研機構は法政大学、ノーザンシステムサービス(盛岡市)と共同で、AIを活用した病虫害画像診断システムの提供を始めた。

各事業者には農研機構が運営する農業データ連携基盤「WAGRI(ワグリ)」を通じて法政大とノーザンシステムサービスが開発した病虫害判別器を提供。生産者が自身のスマートフォンでトマト、キュウリ、イチゴ、ナスの4作物の葉表や葉裏などを撮影し、農業情報サービス事業者などに画像データを送ると、うどんこ病といった病害やハダニ類などの虫害を診断する。

実運用精度は約8割で、これまでに3社が利用を始めた。農業情報研究センターの山中武彦ユニット長は「地域農協や企業が何か新しいサービスを始める場合、最低限の投資で高精度の判別器を使える」と、システム提供の意義を強調する。

システムの開発に当たり、農研機構と24都道府県の公設試験場の専門家が各専門分野の病害・虫害の正確な診断が付いた画像を大量に収集した。「寄って撮るのか、引いて撮るのかという点や、画質の高低、画像フォルダ名が統一されていなかった」(山中ユニット長)ため、ツールを駆使し意思統一したという。

農研機構は現在、ピーマンやカボチャなど追加10作物についてもAI画像判別器を開発中だ。農研機構と公設試の専門家が集めた画像を活用し、開発できた判別器から21年度中に順次ワグリで公開していく計画。さらに、この仕組みを継続していくためにも一般の生産者が撮影した画像も活用し精度を向上させていく。今後について山中ユニット長は「病気や害虫に付随する情報をデータベース化して提供していきたい」とする。判定された病虫害に対して対処方法を提案する仕組みを構築中だ。(山谷逸平)

日刊工業新聞2021年10月1日

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