大規模障害で信頼揺らぐドコモ、グループ3社統合で描く成長への戦略
NTTドコモが収益源の多様化を加速させる。NTTコミュニケーションズ(NTTコム)とNTTコムウェア(東京都港区)を2022年1月1日付で子会社化すると決定。法人事業などの強化につなげる。ただ、この3社の統合が消費者向け非通信事業の拡大にどう資するかは見えにくい部分もある。屋台骨としてきた通信事業への信頼が14日の大規模な通信障害で揺らぐ中、難しいかじ取りが待ち受ける。(編集委員・斎藤弘和)
「サービス事業(が主体の企業)へシフトできなければ、“土管屋”で終わってしまう」―。MM総研(東京都港区)の横田英明常務は、ドコモの状況をこう分析する。
土管屋とは、通信だけを提供する存在を指す。国内通信会社は海外製スマートフォンやクラウド基盤の普及などに伴い、差別化要素が減っていくと懸念されてきた。近年は政府の政策で携帯通信料への値下げ圧力も強い。井伊基之ドコモ社長は「通信事業は中期的に何とか維持し、できれば成長軌道にもっていきたいが、(業界の潮流として)料金は引き続き下がる」とみる。
そこでKDDIやソフトバンクを含む大手各社は法人事業の拡充などで収益源多様化に腐心してきたが、NTTは民営化や分割の経緯もあり、技術や知見がグループ各社に分散している側面が否めなかった。今回の3社統合で「必要な武器を一体にして進められるところに立った」(井伊ドコモ社長)。ドコモは22年夏をめどにNTTコムへ法人事業を集約する方針で、業務効率化も期待される。
他方、金融・決済をはじめとするドコモの「スマートライフ事業」に3社統合がどのような波及効果をもたらすかは、やや見えにくい。コムウェアの能力を生かしてソフトウエア開発を迅速化できる可能性はあるものの、同社は従来NTTグループ各社の社内情報システムを中心に手がけてきた。消費者に求められるスマホ用のアプリケーション(応用ソフト)やサービスで実力を発揮できるかは未知数とも言える。
また、そうしたスマホアプリは通信が途切れてしまうと基本的に使えなくなる。井伊ドコモ社長は14日に自社が起こした通信障害について「深くおわびする。社会生活の基盤となっているモバイル通信を担う企業として、このようなトラブルを繰り返さないよう、技術の向上や顧客対応の改善などを至急進めていく」と述べた。通信の確保に細心の注意を払いつつ、3社の統合効果を早期に示すことは容易ではない。
国際事業の強化も課題だ。NTTは23年度に海外売上高を250億ドル(約2兆8500億円)とする目標を取り下げた。「コロナの影響も大きい。高い目標で背伸びをさせるより、海外営業利益を守りたい」(澤田純社長)。ドコモは海外通信事業者向けの商材の展開や、次世代通信技術の実用化に関する研究開発を担う立場でもある。そうした活動を加速し、海外でNTTグループの存在感を向上できるか試される。