最近よく聞く「経済安全保障」のポイントは?担当大臣インタビューをテキストマイニングで分析

小林鷹之経済安全保障担当大臣インタビュー

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報道各社のインタビューに応える小林鷹之経済安全保障担当大臣
 長引く米中対立やコロナ禍で露呈したサプライチェーン(供給網)の脆弱性などを背景に、重要物資の安定調達や機微技術の海外流出防止を目指す『経済安全保障』の動きが注目を集めている。4日に発足した岸田政権は、新たに経済安全保障担当大臣のポストを設けて目玉政策の一つに掲げた。各省庁にまたがる施策をまとめる司令塔として、防衛やエネルギー、食糧などと同様に国民の生活や産業をどう守っていくのか。衆議院当選3回での初入閣で「異例の抜擢」とも言われた小林鷹之大臣と報道各社とのインタビューの内容をテキストマイニングで分析した。

小林大臣がインタビューで語ったこととは

―サプライチェーン上の重要分野に関する課題にどう取り組みますか。
 「半導体、レアアース(希少金属)などの戦略物資はどれも重要で同時並行で取り組まなければならない。(半導体受託製造で世界最大手の)TSMCが日本での製造拠点建設を表明したが、一企業の意思表明としては担当大臣の立場から歓迎したい。半導体はデジタル社会の基盤を支えるものであり、まずは安定供給の基盤構築が重要だ。特に、TSMCの製造拠点の進出は我が国の先端半導体に関する基盤を作る際のミッシングピース(不足箇所)を埋めるものになる。政府として(半導体関連で)他国に匹敵する措置を講じると掲げてきたが、喫緊の課題として経済産業省など関係省庁と連携しながら日本の半導体産業の再生に向けて取り組みたい」

―岸田首相が所信表明で国家安全保障戦略の見直しに触れましたが、経済安全保障に関する内容をどう組み込みますか。
 「安全保障の裾野が経済、技術などの分野にも広がり、サプライチェーンを含めて経済安保の重要性が高まっている。担当大臣として国家安全保障戦略の見直しには積極的に参画していく。自民党は『経済安全保障戦略』の策定の必要性を提言しているが、実際のところは私が関わってきた。今度は政府側の立場として提言を踏まえながら検討を深めていく。現在のところ具体的なスケジュールや形式が決まっているわけではないが、国内外の情勢が流動的なことも踏まえて戦略の見直しが進んでいくだろう」

―金融分野も経済安保の中で重要な位置を占めますが、環境整備を含めた具体的な対策は。
 「自民党の提言の中でも情報通信、エネルギー、医療、運輸・物流、金融を戦略基盤産業として掲げた。金融分野は国民生活を支える上で重要な位置を占めるとの認識は担当大臣になっても変わらない。金融機関は個人、企業に関わる大量の情報を持つ。どんな事象が起きても国民生活や産業を維持し続ける役割を担うことが自立性を確保する上でも重要だ。データの適切な管理やサイバーセキュリティー対策の強化、業務提携や委託など外部との連携を通じたリスク管理などについて、金融機関には早急に取り組んでもらう必要がある。インフラ機能の維持に関する安全性・信頼性の担保も重要だ」

―通貨をめぐる動きもポイントになりそうです。
 「通貨に関する動きも経済安保上極めて重要になる。歴史を見ても、英国から米国への覇権や基軸通貨の移行が国際社会全体のパワーバランスに影響を与えてきたし、今後はデジタル通貨が世の中に出てきてさらに変わっていく。日本の立ち位置にどう影響を与えるか様々な角度からシナリオを分析し、経済安保の観点から検討を深めなければならない。日本が国際秩序を形成していく上で主導的な役割を果たすには、デジタル通貨に関していつでも技術面や法整備などの実行に移せる準備が必要になる。価値観を共有する同盟国と比べ、日本は日本銀行、財務省、金融庁の連携による意思決定が早く済み、技術もある点で大きな可能性があるのではないか」

「報道を通じて大臣候補に挙がっていることを知った」と話す小林大臣

-日本が持つさまざまな分野の技術の海外への流出も懸念されています。
 「技術的優位性の維持、確保の観点から政府はこれまでも重要技術の流出防止に関する取り組みを進めてきた。例えば、経済安保の体制を築く上で研究の健全性や公平性を担保が求められる。研究者が公的な資金を申請する際に外国から同時にお金をもらっていないか開示を求める仕組みについては、年度末までにしっかりと形にしていく。機微技術の流出防止の観点からは、外為法に基づく投資や輸出管理も厳格に執行していく。企業やアカデミアにおける内部管理の支援もこれからやっていかなければならない。研究やイノベーションはグローバルでオープンであるべき。海外から多くの留学生や研究者を惹きつける国でなければならないが、誰でも入ってきていいかと言われると必ずしもそうではない。そこには一定のルールを設けてしっかりと水際対策を講じながら、体制を強化していく」

―経済安保について考えていく上で足元での日本の課題は。
 「重要技術の保全、育成やサプライチェーンの強靭化に取り組まなければならないが、より幅広い視点で見れば日本がどういう状況に置かれているか把握する作業に早急に取り掛からなければならない。さまざまな分野でリスクシナリオが想定できるが、実際に政府として取り組めないのであれば国民生活を支えられないことにもなる。自分たちの弱みがどこにあるか脆弱性を全て洗い出し、対策を取っていくことをどの産業でも取り組まなければならない。弱みの解消とともに、日本の強みがどこにあるかもプラスアルファの課題となる。強みの把握は、脆弱性の把握と違って難しい。現時点で日本にどんな強みがあるかは比較的わかりやすいが、3年後、5年後となったときにその強みがあるかわからないし、さらに違う分野が重要になっているかもしれない。目利きの力を高めた上で日本がどこで勝負していくのかの見極めが重要になる」

―取り組みを進める上で政府と民間企業との間でセンシティブなやり取りも求められると思います。
 「サプライチェーンの強靭化や産業競争力強化が問われる中、例えばTSMCの日本での製造拠点建設に向けて国として具体的な支援のあり方を考えている。ただ、国家戦略として進めるにはまず民間企業に頑張ってもらわないと産業再生は進まない。日本の半導体産業について言えば今、瀬戸際に立たされている。世界の約半数のシェアを占めていた1980年代から足元では10%前後に落ち込んだが、個人的な思いとして世界のど真ん中に持ってきたい。次世代半導体の研究開発を『誰とどのように進めるか』が必要になるし、10年、20年のスコープで半導体産業を再生するには安定供給だけでなく需要や新しい市場をどう作り出していくかも欠かせない視点になる。そうしたものを早急にパッケージとして示し、企業やアカデミアと連携を取りながら絵を描いていくことに政府の果たすべき役割があるんじゃないか」

テキストマイニングで浮かんだ「半導体」「TSMC」「サプライチェーン」…


小林大臣の発言にはどんな特徴があるのか。ユーザーローカル(東京都品川区)のテキストマイニングツールで分析すると、文字だけでは読み取れない傾向が見えてきた。

今回のインタビューでは「日本」が11回で最も多く、次に「重要」が10回と続いたが、文脈の相関関係を踏まえた分析は少し趣が異なる結果が出た。上記のマッピング図からは半導体、サプライチェーン、TSMCなどの言葉が強調されている。インタビュー日にはTSMCが日本での製造拠点建設を正式表明し、各社の質問も関連する内容が多いことが影響している。実際に本人の声のニュアンスからも、半導体産業の動向に関心を示している印象を受けた。

一方、実際に現場で本人の言葉を聞いた際の印象とテキストマイニングで示された結果と開きがあると感じたのは金融に関する部分だ。経済安全保障では戦略物資の調達や機微技術の流出防止がこれまでも議論されてきたため自ずと関連する単語が発言の中に出てきやすい。対して、経済安全保障と金融分野との関係性はそれほど焦点が当てられていない。インタビュー中、ある記者から金融分野について問われた小林大臣は、元財務官僚としての知見も踏まえながら詳細に今後の可能性を述べていた。

前向きなニュアンスの言葉が多かったことも、今回のインタビューの特徴の一つに挙げられる。新設の担当大臣として、あるいは初入閣したことによる意気込みも、「取り組む」や「講じる」などの言葉としてマッピング図に反映される結果となって表れた。

日刊工業新聞2021年10月20日掲載記事に加筆

COMMENT

高田圭介
編集局経済部
記者

就任間もない時期には差し紙(現場から渡される答弁資料)に目を落としながらぎこちなく話す大臣も多い中、入閣前から自民党内の部会で経済安全保障に関する提言作成に携わった経験や元財務官僚としての説明能力もあってか、よどみなく自分の言葉で話す姿が印象的でした。岸田首相が組閣で意識した「老壮青」のうち「青」の立場で(記事アップロード日時点で46歳なので、実際は壮年だと思いますが...)、民間を巻き込んだ実行力をどう発揮するか手腕が問われそうです。

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