売電収入で「永続地帯」の地方再生は可能か

千葉大・倉阪教授に聞く。再生エネ導入のシナリオは自治体の腕の見せ所

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倉阪秀史氏
 気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が終わると、世界で再生可能エネルギーの導入が加速される。日本では太陽光発電の導入に逆風が吹きつつあるが、温室効果ガス排出削減目標の達成には再生エネの利用拡大が欠かせない。再生エネでエネルギー需要の100%を賄える市町村を「永続地帯」と定義し、地域主導での普及を提言している倉阪秀史千葉大学大学院教授に、再生エネの普及策を聞いた。

 ―まず永続地帯について教えて下さい。
 「地域の民生(家庭と業務)と農林水産業のエネルギー消費量よりも導入済みの再生エネの発電量が多い市町村が、エネルギーの永続地帯だ。エネルギー需要が小さい地域からの再生エネへの移行が現実的。実際に我々の調査でも2014年3月時点で57市町村が永続地帯だ」

 ―日本は再生エネの導入拡大に慎重です。
 「電源構成の議論で安価な電力を安定供給するベースロード電源から太陽光と風力が外れた。ベースロード電源に入った石炭火力は世界で規制が強化されており、いずれ自由に使えなくなる。原子力発電は廃炉費も含めるといつまでも安い電源ではない。一方で再生エネはコストが低下している」

 ―再生エネの導入拡大にはスマートグリッドなど系統安定化への投資が必要です。
 「国には再生エネの導入量を増やす投資をする役割がある。そして変動する再生エネを使いこなす技術開発をすべきだ。世界各国が再生エネの導入を増やす訳だから、開発した技術は途上国に売り込める。国内で再生エネの利用比率が低いと開発意欲が薄れ、新しいビジネスの芽を摘む」

 ―再生エネ導入の進め方は。
 「自治体が主導して再生エネ事業に取り組んでほしい。地元にできたメガソーラー(大規模太陽光発電所)の所有者が地域外の企業という自治体が多い。20年にわたる売電収入を地域に残し、地方再生に使うべきだ」

 ―自治体への支援は。
 「人口の多い自治体ほど再生エネの導入計画を作っている。対照的に建設用地のある自治体ほど規模が小さく、人員も限られるため導入計画を持たない。人材育成や資金調達ノウハウの習得で国が支援してもいい。再生エネは地域の資源であり、地域づくりに使うべきだ」

【記者の目/自治体は長期視点で普及狙え】
 海外で石炭が「座礁資産」と呼ばれている。温室効果ガス排出規制が強まると石炭火力が使えなくなるためだ。現実に国際機関などは石炭火力への資金供給を控え始めた。どうも海外と日本では電源議論に違和感がある。再生エネはコストが下がり続けている。自治体には長期視点で再生エネの普及を担ってほしい。
(聞き手=松木喬)

日刊工業新聞2015年12月10日環境面

COMMENT

 原発に関し賛否両論がある日本とは裏腹に、2015年9月現在、全世界で435基の原子力発電が稼働し、70基が建設中、160基が計画中である。今年発表の日本政府のエネルギー長期見通しでは、2030年に再生エネ22~24%、原子力20~22%、石炭26%程度の電源構成になっている。  一方、欧州に目を転じるとFIT(固定価格買取制度)が見直され、太陽光発電市場に逆風が吹いている。再生エネは不安定電源なので導入拡大にはスマートグリッドなど系統安定化への投資が不可欠であるが、地方創生を標榜している政府としては、この「永続地帯」での地域主導の再エネ普及を後押しすべきではないか。温暖化対策としての再生エネ導入シナリオは、地方創生メニューとして地方自治体の腕の見せどころである。

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