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セグウェイ、中国ロボットメーカーの子会社に

安全無視の低価格製品が“本家”を食う!
セグウェイ、中国ロボットメーカーの子会社に

中国Ninebot社のパーソナルモビリティ(同社ホームページより)

 中国のNinebot(ナインボット)社は4月15日、米Segway(セグウェイ)社を全額出資子会社化したと発表した。米Sequpia Capital(セコイア・キャピタル)など複数のベンチャーキャピタルなどから8000万ドルの資金を調達して買収した。買収金額は明らかにしていない。買収後も両社はそれぞれのブランドで事業を続ける。

 Ninebot社は2012年設立のロボットメーカーで、Segweyに酷似した倒立2輪タイプの「ナインボット」(写真左)や、一輪車型の「ナインボットワン」(写真右)などパーソナルモビリティを中心に展開している。

 Segwayが開発コードネームの「Ginger(ジンジャー)」を改め、Segwayとして販売を始めたのは2001年12月。さらに遡ること、電気通信大学の山藤和男名誉教授らがセグェウェイの基本原理といえる平行2輪車ロボットを発表したのは1986年(「同軸二輪車における姿勢制御方法」としての特許の出願は1987年)と、倒立2輪タイプのモビリティは30年近くの歴史がある。コモデティ化が著しく進んでおり、中国では「Chegway(チャグウェイ)」や「WindRunner(ウィンドランナー)」などSegwayの模倣品が十数種類も存在する。しかも基本機能はほぼ同等ながら、Segwayの2分の1~3分の1程度の価格でワールドワイドに展開しており、各国で販売台数を伸ばしている。

 しかし、セーフティ(安全性確保)については、相当なレベルの差があり、Segwayは機能安全規格「IEC 61508」における「SIL(安全度水準)3」に相当する信頼性を確保している。SILとは「Safety Integrity Level」の略で、SIL3は、それが備える安全機能が果たせない度合、つまり失敗する度合いが10のマイナス8乗以上~10のマイナス7乗未満(高頻度での動作要求の場合)と極めて低い失敗確率となる。当然、これだけ信頼性の高いシステムにすれば高価格になり、中国製パーソナルモビリティにはこのような信頼性はほぼ存在せず、低価格での販売を可能にしている(*)。これのみに理由を求めることはできないが、安全を犠牲にした低価格製品が“本家”を食うかたちとなった。

 なおSegwayは、厳密には米DEKA Products Limited Partnership社のライセンスを受けて製造販売している。2009年に英国のJimi Heselden氏に、2013年にはSummit Strategic Investments社に買収されており、累計で販売台数は2012年時点で約10万台とされていた。

*:筆者がトヨタ技術者と検証した決壊よる。詳細はロボット専門サイト「ロボナブル」を参照してほしい(特集「徹底検証!中国製パーソナルモビリティ」:http://www.robonable.jp/special/2012/08/robin-m1-1.html)。
ニュースイッチオリジナル
今堀崇弘
今堀崇弘 Imahori Takahiro 大阪支社事業・出版部
倒立2輪タイプのモビリティの特許は、Segwayが基本特許を押さえています。当然、中国製はほぼすべて特許侵害をしており、NinebotもSegwayから訴えられていました。しかし、中国国内で訴訟を起こしても勝てる見込みはなく、今回の件は、知的財産の扱いも考えさせられる話題だったといえます。segwayと中国製とのセーフティの差異にについて知りたいという超マニアの方は、ロボット専門サイト「ロボナブル」をご参照ください。2015年2月発行のパーソナルケア・ロボットの国際安全規格「ISO 13482」にもとづいて分析しています。トヨタの方にも参考にしてもらいました。

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