高容量で高出力、「空飛ぶクルマ」用電池を2022年度に製品化
エナックスが開発
エナックス(東京都文京区、桜井信昭社長)は、「空飛ぶクルマ」向けのリチウムイオン電池を開発した。負極に使うシリコンの割合を一般的なリチウムイオン電池と比べ2・5倍超の約80%に高め、飛行時間を延長できるよう高容量化。併せて離着陸時に求められる高出力化にも対応した。2022年度に製品化し、初年度数十億円の売り上げを目指す。電気自動車(EV)への展開も見込む。
空飛ぶクルマは電動で垂直離着陸できる乗り物で「eVTOL」とも呼ばれる。都市間や山間部などでの輸送手段として世界で機体開発が広がる。
エナックスが今回開発したリチウムイオン電池はラミネート(パウチ)型。負極に含まれるシリコンの割合を一般的な同電池の30%から80%前後まで引き上げた。重量エネルギー密度は1キログラム当たり280―300ワット時。電池の出力を表す指標は約6Cレートと同3―6倍程度高めた。
空飛ぶクルマに近い形態の大型飛行ロボット(ドローン)では現在、リチウムイオンポリマー電池が使われていることが多い。新開発の電池はリチウムイオンポリマー電池に比べて重量エネルギー密度が1・2倍、サイクル性能(寿命)が2倍、入出力性能が同等になると見込まれる。
主要材料のシリコンは充放電の際に膨張収縮する性質がある。このため、電池の高容量化に向けて負極のシリコン割合を高めることが難しかった。
エナックスはシリコン活物質の構造を工夫。加圧技術と合わせ、負極にシリコンが多く含まれていても膨張収縮を制御できるようにした。正極の集電性や電解液の組成などを改良し、入出力性能も高めた。
同社は21年度中に航空宇宙分野の品質管理規格を取得し生産体制を整える。大型ドローンやEV、鉄道、航空機への展開も狙う。
日刊工業新聞2021年10月13日