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「ルノー・日産VS仏政府」決着の行方。専門家の見方は?

11日(現地時間)はルノー・日産が設定した期限。資本構成は変えられるのか侃々諤々
「ルノー・日産VS仏政府」決着の行方。専門家の見方は?

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 仏政府がルノーへの介入を強めている問題を受けて、11日(現地時間)にルノーが取締役会で対応策を協議する。仏政府の間接的な影響が懸念される日産自動車にとっては「独立性の確保」がカギだ。日産の独立性を巡りルノー・日産間の資本構成がからむ一連の問題はヤマ場を迎えそうだ。

 仏政府の強硬姿勢で日産の独立性が揺らぐ中、日産は先月末に臨時取締役会を開き「引き続き経営の独立性を確保することを確認した」(日産関係者)。ロイター通信によると具体策として、仏政府が保有するルノー議決権の制限に加え、ルノーが日産の経営に介入しない旨を文書で確約することを求めている。

 日産が独立性を確保する手段としては、日産のルノーへの出資比率を15%から25%に引き上げ、ルノーが持つ日産株の議決権をなくすなどの方法もある。会社法などに詳しい松井秀征立教大学法学部教授は「今回のケースで仏政府に対抗するのにまずは議決権の裏付けから考えるのは妥当」と話す。

 経営危機下にあった日産をルノーが救済してから16年が経ち、今や事業規模は日産がルノーを上回る。事業の実態は親子逆転しているのに資本構成は主従関係のままで不均衡だとの見方は根強い。

 仏政府の介入を巡って日産が独立性を確保するのは当然として、資本構成を均衡に近づけるチャンスと見る向きもある。自動車産業経営に詳しい黒川文子獨協大学教授は「仏政府の介入をかわすと同時に資本構成をできるだけ均衡にするのが日産にとって望ましい決着かもしれない」と話す。

 一方でナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は「巨額の資金を投じて資本構成を変えるのは費用対効果から見て賛同しかねる」と疑問を呈した上で「(資本構成を変えるという姿勢は)仏政府へのけん制に過ぎず、現状維持に近い形に決着するだろう」とみる。確かに、経営に介入しない確約を取り付けて日産の独立性が確保されるのであれば、資本構成の現状維持という選択肢もあり得るかもしれない。

 ロイター通信によると、日産はルノーに対する議決権や株式持ち合い比率の変更を巡るこれまでの要求を軟化させている。仏政府もルノーに対する議決権の行使を制限する提案をするなど歩み寄りの姿勢をみせているという。日産の独立性を巡って、長年不動だったルノー・日産の資本構成は変化するのか。11日以降のルノー、日産、仏政府の動向に注目が集まる。
(文=池田勝敏)
日刊工業新聞2015年12月11日 自動車
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
仏政府との間で妥協間近というロイターの報道もあるが・・。仏政府はテロ対応など課題山積でひとまず現状のまま先送りというのが妥当なところか。

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