ダイキンが関電と実証。「工場の節電モデル」の全容
ダイキン工業は関西電力と組み、太陽光発電と業務用空調機の出力を調整することで最大電力を抑え、電気料金を低減する実証実験を堺製作所臨海工場(堺市西区)で始めた。両社のエネルギー管理システムも併用し空調の電力を下げ、工場内で許容できる節電モデルを築く。空調トップと電力会社が自ら実践し、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた顧客のエネルギー削減策も支援する。(大阪・田井茂)
「実際の節電効果や快適に制御できたかを顧客に示し、採用を働きかけたい」―。ダイキンの大城泰樹堺製作所担当部長は実証実験にこう期待を示す。ダイキンはエネルギー統合管理の表示制御盤、関電は空調の電気代低減を見込める制御システムを販売している。この二つを組み合わせ実験データも含む説得力ある節電モデルを作り、採用する顧客を増やしたい考えだ。関電は制御システムを7月に発売し、ダイキンは2012年から表示制御盤を年間2000台販売している。
当初は関電からダイキンに太陽光の導入を提案した。ダイキンは空調と組み合わせたサービスを築く好機として受け、実証実験もすることで合意した。7月に開始した実験に際し、ダイキンは臨海工場に関電の太陽光160キロワットを追加設置し、既存も含め460キロワットに増やした。太陽光は夕刻や曇り・雨で発電が落ちるのが弱点。この時間帯に室温の快適性を損なわず電力消費の大きな空調を抑えられるかがカギになる。
関電は制御システムで空調の室内機166台と室外機20台を対象に能力を最大15%抑える。室温は最大1・5度C上がると想定する。関電の方式はいきなり空調を切らず、出力を段階的に下げ快適性をなるべく損なわないようにする。関電の田口雄一郞ソリューション本部課長は「室温や湿度だけでなく体感温度も調べ、本当に思うとおり制御できるか、どこまで許容できるかを見極めたい」と説明する。多くの企業に日中の最大電力抑制の協力を求める客観的なデータづくりにもなる。
7―9月の実験を終えたが、22―23年3月まで断続的に実験を繰り返す計画。両社はデータを分析・評価し、顧客が納得できる営業の材料にまとめる。両社はこれまでも協力し省エネシステムを営業する場合があった。太陽光の設置顧客へ共に提案できる新たな手法としても期待する。
堺製作所は18年に25年ぶりの新棟となる臨海工場1号工場を建て替えた。太陽光を初期から設置し業務用空調機も生産しているため「実証試験にはうってつけだった」(大城担当部長)とする。空調トップの模範的な「環境優良工場」としても訴求する。関電との協力を深め、省エネシステムを事業モデルに育てたい考えだ。