【動画あり】「災害に強いロボ」が競い合う、福島の地で世界大会「WRS」開幕

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プラント災害競技のパドック。福島RTFの試験用トンネルに各チームが並ぶ

ロボットの社会普及や研究開発を促進する競技会「ワールド・ロボット・サミット(WRS)2020」福島大会が8日開幕する。インフラ保守と災害対応をテーマに、世界の技術者がロボット活用の技を競う。平時だけでなく、災害時にも利用できるロボット開発の方向性を見いだしてもらうのが今大会の狙いの一つ。防災・災害ロボットのビジネス化を後押しする大会とする。福島の地から災害に立ち向かうロボットを発信する。(小寺貴之)

【チーム力競う】遠隔技術が「決め手」

WRSは経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が共催する。競技会と展示会を通して、技術開発とロボットを使いこなす社会作りを促すことが目的だ。福島大会を通じて災害に強いロボット社会の在り方を訴求する。

例えば化学プラントで点検業務に使われているロボットがあれば、自然災害や事故があったときにロボットで現場を確認できる。被災現場に火災や薬品などの危険があっても、ロボットなら被害者を出さずに済む。そのためには日常から点検ロボを運用して人材を育てるなど、現場とロボットに通じたチームが必要になる。これがWRSで提案する災害対応ロボを社会に根付かせる仕組みだ。インフラ保守と災害対応の両方で活躍するロボットとチームを見てもらう。

WRSでは3種類の競技を設計した。プラント災害予防競技とトンネル事故災害対応・復旧競技、災害対応標準性能評価(STM)競技の三つだ。

プラント災害競技では福島ロボットテストフィールド(福島RTF、福島県南相馬市)の試験用プラントで平時と災害時のプラントを再現する。競技は日常点検業務と災害時対応がメーンとなる。日常点検業務ではロボットで圧力計などのメーターを読んでバルブを調整し、設備の異常を探す。数ある配管の中から通常よりも高温の配管を特定し、異常振動や異音が発生しているポンプをみつける。

ダクトや大径配管の点検も求める。ロボットがダクトの中に入って錆や異物を探したり、配管継ぎ手のボルトが緩んでいないか調査したりする。タンクの点検ではクラックや錆、減肉の発見など人間の作業者でも熟練しないと難しい技術で競う。

災害時対応では爆発事故を想定し、行方不明になった作業者1人を捜索する。平時の点検業務でロボットの基本能力を評価して、災害時の初動調査で総合的な能力を確かめる。

トンネル災害では、さらに厳しい状況を設定する。トンネル内での多重事故によるガソリン漏れで火災のリスクある中にロボットを投入して、ドライバー救助するシナリオだ。これは実機では再現できないためシミュレーションで競技化した。

トンネル事故災害対応・復旧競技の大阪電通大のパドック。双腕建設ロボットのミニチュアを操作してシミュレーションの中のロボを操縦。デジタルツインで繊細な作業を実現

まずは狭く暗い災害現場で車内に人が残されていないか調査する。要救助者を発見したら車両のドアを破り救出する。ドアを破るにはスプレッダーという工具を使う必要がある。これが遠隔操作だと難しい。そして負傷した救助者を運び出す際には、細心の注意を払う必要がある。

他にも動線確保のためのがれきの片付けや消火ホースを使った放水、トンネル設備の異常点検を競技化した。一連の競技をたった2人で行うルールとした。複雑で困難な救助作業を少人数で安全に遂行できると示せれば、災害対応ロボを運用する制度設計の議論が緒に就くかもしれない。

【基本性能を可視化】生産性向上と両立

STM競技ではロボットの標準性能を試験する。移動能力やセンシング能力、情報収集能力、無線通信能力、遠隔操作性能、現場展開能力、耐久性と、個々の性能を評価する。配管がれきを模擬したパイプをかき分けて進む課題や、不安定な足場での障害物除去など5課題が設定された。

評価項目を細分化したのは、災害現場によって状況が全く異なるためだ。競技でプラント災害とトンネル災害を再現しても、全く同じ災害は二度と起こりえない。つまり、救助できた、できなかったと成否だけをみていても意味はない。次に起こるかもしれない災害に備えて、ロボットの基本性能を標準的な方法で評価してカタログ化する必要がある。さまざまな機体の基本性能が可視化されていれば、災害現場に応じて機体を選べる。

STM競技でバルブを操作するロボ、会津大学チーム

STM競技で基礎力を評価して、プラント災害競技やトンネル災害競技で総合力を評価する。この三つの競技設計がロボットの進歩を見える化するベンチマークになる。そして競技会でロボットと運用チームの姿を見せることで、企業などは現場への実践導入を考えやすくなる。

企業にとって防災技術の導入は、費用対効果の点から難しい経営判断になるケースが多い。このため日常業務の中に、災害時でもロボットが力を発揮する仕組みを埋め込んでいく必要がある。幸いインフラ点検などロボットにできる仕事は増えている。生産性向上と災害への備えは両立できる。だが、この運用を設計できるのは現場に通じた人だけだ。ロボット研究者に任せておくだけで普及するような技術ではない。自分が預かる現場に、どんなロボットが向いているか。WRS福島大会は、世界から集まるロボットを見て考える絶好の機会になる。

COMMENT

小寺貴之
編集局科学技術部
記者

災害は忘れたころにやってくる。最近は忘れなくてもやってくるように感じます。そして感染症と自然災害など、多重複合化しています。ここに地域の状況を掛け合わせると、万能薬はなくて、解くべき問題が山のようにあります。この問題を解くのは自分たちです。公助では生産性とレジリエンスを同時に上げるようなことはできません。なぜなら現場の実課題を解かないといけなくて、それを解けるのは現場を預かる人間だけだからです。

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