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米利上げ間近!日本の鉄鋼業界は前向き?

北米の自動車販売は堅調。ドル高円安が進めば業績にプラス
米利上げ間近!日本の鉄鋼業界は前向き?

トヨタの米ミシシッピ工場(トヨタメディアサイトから)

**米国の利上げが秒読み
 米国の利上げが秒読み段階に入っている。日本の産業界への影響については多少、見解が分かれているものの、鉄鋼業界はおおむね前向きに受け止めている。米国経済の堅調さが証明され、米国での事業展開に弾みがつくとの見方がある上、さらなるドル高円安の進行も予想され、業績へのプラス効果が好感されているためだ。

 「利上げできる環境になることは喜ばしいこと。それだけ米国の実体経済が強いということだから。利上げと言うより、金利の正常化と言った方が適切だ」。新日鉄住金の太田克彦副社長の言葉が業界の見方を代表する。米国は自動車や住宅などの主要産業が堅調で、鋼材の輸入量も減少傾向にはあるが、高水準を保っている。日本からの普通鋼鋼材の輸出量も2015年は1―10月で前年同期を4・3%上回る。

 そうした見方の背景には、実際に米国で手がける事業での手応えがある。日立金属では昨年秋に買収した自動車用鋳物メーカー、ワウパカファウンドリー(ウィスコンシン州)をはじめ、北米事業が好業績を下支え。「特にワウパカで米国の好況を享受できている。利上げの影響はそう大きく出てこない」(高橋秀明社長)と自信をみせる。むしろ米国では「これからどうやって事業を拡大していくかに注力していく」と、利上げいかんにかかわらず、経営資源を傾注していく構えだ。

車向け堅調


 神鋼商事も「米国は自動車向けが堅調。利上げによる影響は今の自動車の好調なペースが続く限り、そう大きくならない」(大城誠市執行役員)と口をそろえる。日鉄住金物産のように「米国向け工作機械の輸出が増えているので、現地の製造業の活動水準が下がってしまうと、マイナスになる」(玉川明夫副社長)という声もあるが、これもあくまで、そうなる可能性があるという程度だ。

 円安もプラスに働く。日本金属では「利上げはあまり影響がないと見ている。むしろ、円安を機に米国輸出を再開しようとしている」(下川康志常務)と意気込む。現在、同社は中国で生産する米系自動車メーカーにステンレス部材を供給しているが、これが「米ビッグスリーの米国工場に採用される余地もある」(同)として米国への再参入を見据える。

 東洋鋼鈑でも「電池用のニッケルメッキ鋼板を輸出しており、利上げで円安になればありがたい。予算は1ドル=120円で組んでいるが、それより円安になればおまけが来る」(大楽高嗣執行役員)と業績へのプラスアルファを期待する。
日刊工業新聞2015年12月11日 素材・ヘルスケア・環境面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
ピックアップトラックやSUVが人気の米国自動車市場。車体や部品など日本の鉄鋼業界にも恩恵は大きい。15-16日に予定されているFOMCでの利上げにより、購入時の支払い金利が上昇して自動車販売にもブレーキがかかる、との見方もあるが、足下は原油安などの追い風が続く。好調な自動車販売、日本の素材業界の米国での“快走”という状況はそう変わらないのではないか。

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