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「ニッポン・テレビ」の終焉近づく!?

東芝、自社生産から完全撤退の方針。「レグザ」ブランドは他社に供与へ
「ニッポン・テレビ」の終焉近づく!?

東芝の4K「レグザ」

 電機大手各社のテレビ事業の構造改革が最終段階を迎えた。各社はテレビ事業に巨額の資本を投じてきたが、海外で韓国、中国勢との過度な価格競争に敗退した。切り札として投入した4Kなどの高解像度テレビも決め手にならなかった。自社開発・生産などから撤退し、ライセンス供与などにビジネスモデルを転換、活路を見いだす。

 米国の大手量販店の床に無機質な段ボール箱に入った日本製テレビが並び、横に置かれた鮮やかな箱の韓国製テレビを一段と引き立てていた。米国はテレビもショッピングカートに載せてレジに並ぶ。この光景を見たある電機大手社員は「これでは日本製品は売れない。販売戦略で負けている」とため息をついた。現地在住の日本人は「過去、日本製テレビがあると自慢できたが、今は韓国製も高品質な製品と認識されている」と指摘する。

 日本の電機大手が海外テレビ事業の大幅縮小を余儀なくされる。これまでもソニーやパナソニック東芝シャープなどは赤字要因のテレビ事業の構造改革を繰り返してきた。すでに米国や中国、欧州などの海外での自社開発・生産の縮小や自社販売地域の絞り込み、OEM(相手先ブランド)調達の拡充などを進めてきたが、今回、東芝はテレビの自社生産から完全撤退する方針を固めた。「レグザ」ブランドを他社に供与するなど抜本的に事業を見直す。

 テレビの巨大市場とされる米国と中国は、画質へのこだわりが欧州や日本に比べて少なく、大画面で安価な製品が好まれる。価格競争も厳しく、14年に単価アップのけん引役として、日本勢が期待を込めて先行投入した高解像度の4Kテレビも「想定以上に価格競争が厳しかった」(電機大手幹部)という。実際、機能面は日本勢より劣るものの、50型4Kテレビで約10万円などの低価格攻勢を仕掛けるメーカーもある。シャープも北米の液晶テレビ事業の自社生産・販売を終了し、2016年1月から中国の家電大手ハイセンスの子会社へシャープブランドを供与する計画。

 東芝のテレビ販売は国内メーカーの中でもシェアトップだった時期もあり、「レグザ」の映像技術も評価が高い。しかしテレビは放送を映す変換器としての価値しかなく、国ごとにカスタマイズが必要で世界中のメーカーで利益を出しているところはほとんどない。デジタル機器は画面サイズごとに一つの製品カテゴリーに収れんしつつあり、ソフトウエアによる機能更新でハードウエアの新陳代謝が起こりにくい。すでにテレビ事業は数年以上前から大幅縮小は避けて通れない状況だった。

 世界市場の約4割を占有する韓国のサムスン電子とLGエレクトロニクスの大手2社に加え、中国新興メーカーなどが引き起こす低価格競争、物量作戦、圧倒的な広告戦略への有効な対抗策が打ち出せなかったことが「テレビ敗北」の背景だ。「台数を追えば赤字になる」(津賀一宏パナソニック社長)との認識は全社共通だが、過去の“家電の王様”との位置づけが呪縛となり、各社の改革判断を鈍らせてきたことは否めない。


日刊工業新聞2015年2月3日付記事を大幅加筆・修正
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
あとはソニーとパナソニックがどこまでふんばるか。2社のリソースを結集し有機ELテレビにシフトしても4Kと同じだろう。ハードウェアのビジネスモデルが通用しないことはみんな分かっているのだが、アップルもそこは苦戦している。

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