ロボット事故の責任は誰が負う?NEDO、模擬裁判で検証
災害対応ロボが転倒、消防隊員が下敷きになって死亡したという想定
ロボット事故の責任の所在は―。ロボットを日常生活に普及させるために、課題と言われているのがロボットが関わって起きた事故の責任の所在だ。ロボットに対応した法整備が必要という主張と、現行法でも十分という両方の意見がある。そこで新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は国際ロボット展で模擬裁判を開き、現状の法律の問題点などを整理した。聴衆やメディアなど社会の反応を調べ、社会受容の戦略を探る。
模擬裁判では無人で働く災害対応ロボが転倒し、近くで作業していた消防隊員が下敷きになって死亡、遺族がメーカーに損害賠償を求めた事案を取り上げた。この災害対応ロボは周辺に人がいない状態で作業することが前提で、安全性が設計されている。だが現場ではロボの近くで人間が作業することが常態化し、事故が起きてしまったという想定だ。
原告の遺族は「近くで人が働く運用法が常態化していると知った上で、メーカーが転倒リスクのあるロボットを作ったことに責任がある」と主張した。被告のメーカーは「無人環境で使うための安全設計は政府のガイドラインに従った。マニュアルにない異常な状況で事故が起きた。責任を問うべき相手は現場責任者」と主張した。模擬裁判では判決は示さず聴衆に判断を問うた。ロボット技術者の多い会場で多数決をとると6対4でメーカーの主張が支持された。
事案を企画した福田・近藤法律事務所(東京都中央区)の近藤惠嗣弁護士・工学博士は「問題の本質はリスクを洗い出して、その対策などをユーザーに伝えているか。リスク影響評価とリスクコミュニケーションにある」という。リスク管理はすべての製品やサービスに当てはまる。
「ロボットだけを特別扱いする必要はない。製造物責任法と労働安全衛生法で対応できる。法整備が必要というグループは、法制度の不備で開発や実用化が進まない具体事例を示すべきだ」(近藤弁護士)と指摘する。
ただリスクはほぼ無限にあり、ロボットのリスク影響評価は簡単ではない。そこでNEDOと産業技術総合研究所などは生活支援ロボの安全性検証法を開発し、国際安全規格「ISO13482」が発行された。一方、どの程度のリスクなら許容されるかは社会通念に左右される。人を超える人工知能は開発指針すら立っていない。「法律よりも社会の合意形成が先だ。法律によって安全性が緩和されたとしても、社会が許さなければロボットは受け入れられない」(同)と強調する。
(文=小寺貴之)
模擬裁判では無人で働く災害対応ロボが転倒し、近くで作業していた消防隊員が下敷きになって死亡、遺族がメーカーに損害賠償を求めた事案を取り上げた。この災害対応ロボは周辺に人がいない状態で作業することが前提で、安全性が設計されている。だが現場ではロボの近くで人間が作業することが常態化し、事故が起きてしまったという想定だ。
原告の遺族は「近くで人が働く運用法が常態化していると知った上で、メーカーが転倒リスクのあるロボットを作ったことに責任がある」と主張した。被告のメーカーは「無人環境で使うための安全設計は政府のガイドラインに従った。マニュアルにない異常な状況で事故が起きた。責任を問うべき相手は現場責任者」と主張した。模擬裁判では判決は示さず聴衆に判断を問うた。ロボット技術者の多い会場で多数決をとると6対4でメーカーの主張が支持された。
事案を企画した福田・近藤法律事務所(東京都中央区)の近藤惠嗣弁護士・工学博士は「問題の本質はリスクを洗い出して、その対策などをユーザーに伝えているか。リスク影響評価とリスクコミュニケーションにある」という。リスク管理はすべての製品やサービスに当てはまる。
「ロボットだけを特別扱いする必要はない。製造物責任法と労働安全衛生法で対応できる。法整備が必要というグループは、法制度の不備で開発や実用化が進まない具体事例を示すべきだ」(近藤弁護士)と指摘する。
ただリスクはほぼ無限にあり、ロボットのリスク影響評価は簡単ではない。そこでNEDOと産業技術総合研究所などは生活支援ロボの安全性検証法を開発し、国際安全規格「ISO13482」が発行された。一方、どの程度のリスクなら許容されるかは社会通念に左右される。人を超える人工知能は開発指針すら立っていない。「法律よりも社会の合意形成が先だ。法律によって安全性が緩和されたとしても、社会が許さなければロボットは受け入れられない」(同)と強調する。
(文=小寺貴之)
日刊工業新聞2015年12月9日 ロボット面