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止まらぬ食品の値上げ、人々の物価観はどうなる?

止まらぬ食品の値上げ、人々の物価観はどうなる?

油脂の高騰で食用油やマヨネーズの値上げが続いている

食用油の価格高騰が止まらない。日清オイリオグループ、J―オイルミルズ、昭和産業の大手3社は11月納入分の家庭用、業務用の食用油の価格を引き上げる。食用油の価格引き上げは2021年で4回目。家庭用食用油1キログラム当たりで100円以上の値上がりとなっている。主因である大豆や菜種などの原材料価格の高騰は今後も続くとみられ、さらに他の食品価格にも波及しそうだ。(高屋優理)

日清オイリオグループ、J―オイルミルズ、昭和産業の大手3社は11月1日納入分から、家庭用食用油を1キログラム当たり30円以上引き上げる。業務用食用油では1斗缶当たり500円以上、1キログラム当たり30円以上。また、加工用食用油バルクは1キログラム当たり30円以上引き上げる。

食用油は20年後半から主原料の大豆や菜種、パーム油の国際価格が上昇。大手3社では21年に4月、6月、8月とすでに3回値上げしており、11月で4回目となる。

8月末に日清オイリオグループが価格引き上げを公表すると、9月にJ―オイルミルズ、昭和産業が相次いで引き上げを公表した。1年で価格を4回引き上げるのは07年以来14年ぶりで、家庭用の1キログラム当たりの価格は年初に比べて100円以上値上がりしている。

食用油高騰の背景には、原料となる大豆の国際相場の上昇がある。シカゴの大豆相場は20年5月に1ブッシェルが約8ドル(約880円)だったが、21年4月には同15ドルと約2倍に高騰。直近では同12ドルとやや下がってはいるものの、依然、高値水準が続いている。

これは中国やインドなどの輸入拡大による需要増や、主要産地である北米の天候不順が主因となっている。ただ、こうした原材料の国際市況の高騰だけでなく、大豆などを輸送するドライバルク船の海運市況も高騰しており、食用油メーカーにとっては、あらゆるコストの高騰が収益を圧迫している格好だ。

油脂類は食用の需要だけでなく、脱炭素の加速によるバイオ燃料としての需要も拡大しており、今後も世界的な需給バランスは強含む見通しだ。

食用油の価格高騰が、食用油を原料とするマーガリンやマヨネーズなどの価格にも波及しており、マヨネーズでは味の素とキユーピーが8年ぶりに価格を引き上げた。食用油が食品価格全体を押し上げる要因になっている。

日刊工業新聞2021年9月7日
志田義寧
志田義寧 Shida Yoshiyasu 北陸大学 教授
足元で食品の値上げが相次いでいる。食用油、コーヒー、マヨネーズ、パスタ、マーガリン、和菓子・洋菓子と、必需品から嗜好品まで幅広い品目で値上げもしくは値上げの方針が打ち出されている。この動きに拍車をかけているのが野菜だ。天候不順の影響で野菜価格は軒並み上昇、筆者が住む金沢市のスーパーでは20日、ハクサイ4分の1カットが258円で売られていた。1個に換算すると、なんと1000円を超える計算となる。もはや高級品だ。こうなると気になるのが人々の物価観である。消費者庁が15日に公表した9月の物価モニター調査では、普段購入している生活関連物資全般の価格が1年後に「上昇する」と予想した消費者は78.8%に上り、2019年12月(79.3%)以来、1年9ヶ月ぶりの高水準となった。人々が値上げを予想すれば、消費の前倒しを通じて現在の景気を押し上げる可能性がある一方、節約志向が強まり、逆に景気にブレーキをかける懸念もある。給料が上がらない中、現在は後者の可能性の方が強いのではないか。景気の「気」である人々の物価観が日本経済に悪影響を及ぼさないか、今後も注目していきたい。

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