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「協創」というコンセプトは日立を成長に導くのか

来年度から組織形態を「製品」から「市場」ごとに転換
「協創」というコンセプトは日立を成長に導くのか

欧州で攻勢を強める鉄道事業(英国向けに高速車両を輸送)

 日立製作所がキャッシュの創出力を高めるため、変革の速度を上げている。キーワードは、顧客のイノベーションを共に創出して成果を分け合う「協創」だ。4月には協創の拡大に向け、組織改革を実施した。またモノのインターネット(IoT)や鉄道システムなど伸びしろの大きい分野では2015年に大型買収も行い、稼ぐ力を強化している。

 日立は都市開発などにおける社会課題に対し、ITとインフラ技術で解決策を提案する「社会イノベーション」を主力事業に位置付けている。この事業をけん引するビジネスモデルが協創だ。

 4月には「協創ビジネス推進本部」と「共生自律分散推進本部」を新設し、顧客ニーズの核心に迫る組織を構築。また米州や中国など海外の主要4地域に総代表を置いて権限を強化し、顧客に近い場所で素早く相談に応じる体制を整えた。

 16―18年度の次期経営計画では協創の拡大に備え、製品別の組織形態から市場に即した形態への転換に着手する。これにより利幅の大きい協創ビジネスについて「(次期経営計画で)連結売上高に占める割合を現在の30%から50%に高める」(中西宏明会長兼最高経営責任者)という。

 実際のビジネスではIoTや鉄道システムに注力している。IoT分野ではビッグデータ(大量データ)分析ソフトを展開する米ペンタホを買収した。生産設備の稼働情報などを収集・分析して稼働率の向上や故障防止を支援するソフトで、IoTビジネスの中核に位置付ける。

 一方、鉄道システムでは、イタリアの企業から鉄道車両・信号メーカーを買収することを決めた。日立は欧州で受注攻勢を強めており、その足掛かりとして用いる。鉄道は社会イノベーション事業の象徴的な存在であり、IoTとも親和性が高い。将来は売上高1兆円を視野に入れる。

 協創の手法を通じIoTや鉄道などでキャッシュの創出に努める日立。その勢いは16年も変わらない。
(文=敷田寛明)
 ※日刊工業新聞では連載「検証2015」を随時掲載中
日刊工業新聞2015年12月8日電機・電子部品
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
何年も前から言われてきたことが、日立の最大の弱点は強いプロダクツを持っていないこと(GEやシーメンスなどのベンチマーク企業と比べ)。それがないことには「協創」と言っても、自社へのリターンがない。IoTの文脈でその言葉も語っていると思うが、「つながる」プロダクツがないと・・。今中期経営計画で鉄道への投資や事業展開は進んだが、情報通信やインフラ系で強いプロダクツは短期間に生まれない(というか大手のITやインフラ会社には真っ向勝負はできない)。建機、昇降機などは候補ではあるがグローバルプレーヤーにはほど遠い。次の中計でグループ子会社の再々編や、カーブアウト、買収などがもっと出てくるだろが、どこに投資するかを注視。

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