ロボットやAI、ドローンの開発で存在感増す“技術者コミュニティー”

参加するモチベーションや成果をどのよにシェアしていくのか

  • 4
  • 19
  ロボットや人工知能(AI)の開発で、技術者コミュニティーの重要性が増している。一つの機体で多様な使い方を提供するサービスロボットは、メーカー単体では、すべてのアプリケーションを開発しきれないためだ。社外の技術者をうまく巻き込み、開発の輪に参加してもらう必要がある。開発ロードマップと整え、技術課題を割り振るだけでは機能しない。コミュニティー戦略の巧拙は事業の命運を握る。

21世紀は「エコシステム対エコシステム」の時代


 まずコミュニティーありき-。飛行ロボット(ドローン)では開発者コミュニティーが新興企業を生み、産業化を牽引している。米3Dロボティックスのクリス・アンダーソンCEOは雑誌「ワイアード」の元編集長。2007年に立ち上げた技術交流サイト「DIYドローン・com」を基盤にドローンメーカーを立ち上げた。

 まず同サイトを通じて知り合ったメキシコの大学中退の若者に、ドローンの開発キットの組み立てを発注。サイトを通じてキットを販売し、開発コミュニティーの中で飛行制御プログラムを改良していった。メキシコ工場が大きくなり12年に同誌を辞め、3DロボティックスのCEOに就任した。現在はドローンの技術開発を主導する企業になった。

 その事業運営は企業の組織管理よりもコミュニティーマネジメントに近い。飛行制御プログラムのコーディングなど、コミュニティーへ貢献に応じてTシャツのプレゼントや販売価格の割引から、開発者への採用、開発リーダーへの登用、開発方針決定への関与、経営チームへの参画へと報酬を上げていく。

 「我々は仕事を頼むときに学歴や経歴は問わない。コミュニティーの中で既に実績のある人から指名する」とアンダーソンCEOは説明する。ドローン市場の急成長と極度の人材流動性が、開発コミュニティーと新興企業の境界をなくした。

 社内と社外に壁を作ることはもう古いのかもしれない。「19世紀は企業対企業の時代。外部委託が進んだ20世紀は製品対製品。21世紀はエコシステム対エコシステムの時代だ。我々はコミュニティー参加者にいかに成功してもらうか日々考えている」という。

ヤマハピアノ教室を目指すペッパー開発


 特に一つの機体で多様な使い方を提供するサービスロボットは開発コミュニティーが事業の要だ。ソフトバンクロボティクス(SBR)はコミュニケーションロボット「ペッパー」のアプリ開発を促すためハッカソンやアプリ開発コンテストを開いている。コンテストには家庭向けとビジネス用アプリ合わせて263件が集まった。仙台放送やカラオケの「JOYSOUND」などもコンテンツを提供している。

 家庭用アプリで優勝したチーム「HUGプロジェクト」はHMDでペッパー視点のコミュニケーションができる遠隔対話アプリを開発した。実際に寝たきりの祖母をペッパーを通して300km先の式場に招いた。祖母はペッパーで新婦を抱きしめ結婚を祝福した。相手を抱きしめ、手を握って感謝を伝えられるのはヒト型のペッパーならではの機能だ。


 ワークショップを含め、これまで7500人が参加。小学生にも作れるほど開発ソフトを易しくした。さらに技術と事業化の両面で開発者を支援する。アプリの安全性を技術認証し、開発依頼の仲介や販促も支援する。ビジネス用の選定アプリにはライセンス料を払い、開発資金をサポートする。200社以上が参画する。

 SBRの吉田健一事業推進本部長は「戦後日本のピアノ文化はピアノ教室が支えた。ヤマの音楽教室は全国3500箇所、卒業生は世界に500万人を超える。その結果、5世帯に1台まで普及した。我々もロボット文化を根付かせたい。開発教室の開設を支援し、16年度中に50教室を設けたい」という。

「社内の技術者よりも上手くHSRを使いこなしている」(トヨタ)


 トヨタも生活支援ロボット「HSR」についてロボット研究者を中心に開発コミュニティーを立ち上げた。生活支援ロボットは片付けやお世話など、細かで多様な仕事が求められる。キラーアプリはなく、家事市場のロングテールを束ねて付加価値を提案する。さらに家の環境も多様だ。家具の配置や床やカーペットの段差、脱ぎ捨てた衣類など毎日環境が変わる。用途ごとのアプリを各家庭に合わせて再チューニングする必要もある。

 玉置章文パートナーロボット部長は「到底トヨタだけでは実現できない。幅広い連係が必要だ」と説明する。そこでHSRは介護支援をターゲットに据えた。筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者や寝たきりの高齢者など、常にそばに介護者がついている必要のある人にとっては、自身で飲み物をとってきたり、床に落ちたリモコンを拾ったりできることは大きな喜びだ。健常者にはささいなことでも毎回介護者に頼まなくてすむ。常勤の介護者が巡回式ですむなど社会負担を軽減できる。

 ロボット開発のゴールを社会課題に据えると、社外の技術者も開発コミュニティーに参加しやすい。患者会など課題を抱えるコミュニティーも協力的で、自室を実証の場として提供したいという患者は少なくない。課題を整理して要素技術に分解し、開発状況を共有する仕組みを整えれば開発コミュニティーは機能する。玉置部長は「大学の卒業研究など初めてロボット開発に取り組む研究者にとって最適なテーマだろう」と期待する。

 トヨタもHSRのハッカソンを開いているが、まだ介護など特定のテーマを決めなかった。使い方はロボット研究者の自由な発想に任せた。すると、洗剤や牛乳など、家庭の消耗品の残量を測って注文するアプリやペットの世話アプリ、HSRとフォークダンスを踊るアプリなど多彩なアプリが開発された。

 玉置部長は「トヨタの技術者よりも上手くHSRを使いこなしている」と舌を巻いた。開発コミュニティーを介護など特定テーマだけに絞れば芽を摘んでしまうリスクもあるのかもしれない。コミュニティーの中で、重介護や生活支援、エンタメなどカテゴリーごとに育てていくことになるだろう。
<全文は日刊工業新聞電子版に会員登録して頂くとお読みになれます>
(文=小寺貴之)

日刊工業新聞2015年12月7日深層断面の記事から抜粋&加筆

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア局長 DX担当

開発プロセスのオープン化は分かるのだが、企業は社内と外部のコミュニティーをどう交ぜていくのか。役割をどこまで外部に出すのか。それこそ戦略なのだろうが・・

関連する記事はこちら

特集