【連載】挑戦する地方ベンチャー No.6 リーフ(後編)
目標は「課題解決型企業」
得意の制御やソフトウエアをハードに組み込み「人と機械の優しい関係をつくろう」と、リーフの森政雄社長は自信満々で創業した。早々にニーズがあるだろうと想定したウエアラブル端末を装備したリハビリツールを開発したが「これが実際に現場のヒアリングを行うとあまり需要がなかった」と惨敗する。
理由は明白だった。リハビリ現場では利用者も介助者も端末をいちいち操作している余裕はない。「ニーズは捉えているが、それを末端まで落とし込めていないことに気付きました。人と機械が混在する世界で自分が何ができるのか」。悩み、苦しむ、本格的な挑戦がようやく始まった。
「製品をつくる上で最も大切なのはコンセプトづくり。これさえしっかりできれば8割は完成したようなものですから」。森社長はこう言い切る。北九州市は高齢化率が高く、これからの時代は医療・介護が成長分野となる。ロボット技術を活用したリハビリツールは必ず成長すると確信し、社内で2年間の試行錯誤を重ねて、歩行リハビリ支援ツール「Tree(ツリー)」が完成した。
ツリーは要介護者と一緒に歩くことで歩行練習行うロボット。映像と音声で分かりやすく足を置く位置などを案内するため、歩行能力を改善するだけでなく練習のモチベーションアップにもつながる。1号機を九州工業大学と、その後は九州リハビリテーション大学校(現九州栄養福祉大学)とも改良を重ねて使いやすくしていった。
ツリーだけではない。足圧モニタインソール 、全方位移動台車、生産ライン搬送装置など、得意の制御技術を生かして医療・介護だけでなく製造業向け搬送装置など多くの製品を生み出して行った。ロボットメーカーとひとくくりにするには森社長自身が言うように無理があるのだ。
では森社長はリーフをどのように成長させようとしているのか。目標は「課題解決型企業」だという。「20年前はインターネットもスマートフォンも世の中になかったですよね。ところが今やほとんどがOS(基本ソフト)付きデバイスを手にしている時代です。20年後はまた社会は激変しているでしょう」と予測する。その中で企業はどう生きるべきか。その答えは「生活を向上させるツール、人間の幸福度を上げる製品が求められます。人が困っていることは何か、そこに製品や市場が必ずあるはず」と考える。
キーワードは少子高齢化だ。激増する高齢者に対して、少子化で今まで以上に大切にされる子供たち。「省人化、効率化、教育、リハビリ…。時代が進んでも課題解決のセンスや技術は求められ続けます」と将来を悲観していない。
そんな同社に15年、転機が訪れた。富士機械製造と資本業務提携したのだ。両社はロボットに必要な要素技術や製品を共同開発していく。富士機械からは約1億円の出資を得た。上場企業からベンチャー企業への出資としては大型だ。森社長も「大手企業からの資本が入ったことで開発など自由度が高まりました」と手応えを感じている。
森社長の目は今海外に向けられている。苦心して作り上げたツリーがシンガポールで評価されているのだ。「シンガポールの公立病院から弊社にオファーがあり、商談の末、評価試験できるまでに至りました。評価試験が行えることが決まった後に、その後の輸出や評価試験時の交渉方法など販路開拓について、ジェトロ北九州から支援(アドバイス)をいただきました 」。現在は現地ニーズに応じた改良を施しており、16年にも導入が始まる。今後は全国の各病院や介護施設にも製品を売り込み「年間50台程度を販売します」と、本格的な量産が始まる。
快進撃が続くリーフ。「本格的なロボット社会の幕開けが楽しみですね」と水を向けると「そうですね。でもうちはロボット会社じゃないんですよ」と、森社長は最後にまたニヤリと笑うのだった。
(文=北九州・大神 浩二)
<会社概要>
リーフ株式会社
所在地:北九州市小倉北区三萩野2丁目8番17号
設立:2008年1月
http://reif.p2.bindsite.jp/index.html>
理由は明白だった。リハビリ現場では利用者も介助者も端末をいちいち操作している余裕はない。「ニーズは捉えているが、それを末端まで落とし込めていないことに気付きました。人と機械が混在する世界で自分が何ができるのか」。悩み、苦しむ、本格的な挑戦がようやく始まった。
目標は総合エンジニアリングメーカー
「製品をつくる上で最も大切なのはコンセプトづくり。これさえしっかりできれば8割は完成したようなものですから」。森社長はこう言い切る。北九州市は高齢化率が高く、これからの時代は医療・介護が成長分野となる。ロボット技術を活用したリハビリツールは必ず成長すると確信し、社内で2年間の試行錯誤を重ねて、歩行リハビリ支援ツール「Tree(ツリー)」が完成した。
ツリーは要介護者と一緒に歩くことで歩行練習行うロボット。映像と音声で分かりやすく足を置く位置などを案内するため、歩行能力を改善するだけでなく練習のモチベーションアップにもつながる。1号機を九州工業大学と、その後は九州リハビリテーション大学校(現九州栄養福祉大学)とも改良を重ねて使いやすくしていった。
ツリーだけではない。足圧モニタインソール 、全方位移動台車、生産ライン搬送装置など、得意の制御技術を生かして医療・介護だけでなく製造業向け搬送装置など多くの製品を生み出して行った。ロボットメーカーとひとくくりにするには森社長自身が言うように無理があるのだ。
では森社長はリーフをどのように成長させようとしているのか。目標は「課題解決型企業」だという。「20年前はインターネットもスマートフォンも世の中になかったですよね。ところが今やほとんどがOS(基本ソフト)付きデバイスを手にしている時代です。20年後はまた社会は激変しているでしょう」と予測する。その中で企業はどう生きるべきか。その答えは「生活を向上させるツール、人間の幸福度を上げる製品が求められます。人が困っていることは何か、そこに製品や市場が必ずあるはず」と考える。
キーワードは少子高齢化だ。激増する高齢者に対して、少子化で今まで以上に大切にされる子供たち。「省人化、効率化、教育、リハビリ…。時代が進んでも課題解決のセンスや技術は求められ続けます」と将来を悲観していない。
海外進出を加速
そんな同社に15年、転機が訪れた。富士機械製造と資本業務提携したのだ。両社はロボットに必要な要素技術や製品を共同開発していく。富士機械からは約1億円の出資を得た。上場企業からベンチャー企業への出資としては大型だ。森社長も「大手企業からの資本が入ったことで開発など自由度が高まりました」と手応えを感じている。
森社長の目は今海外に向けられている。苦心して作り上げたツリーがシンガポールで評価されているのだ。「シンガポールの公立病院から弊社にオファーがあり、商談の末、評価試験できるまでに至りました。評価試験が行えることが決まった後に、その後の輸出や評価試験時の交渉方法など販路開拓について、ジェトロ北九州から支援(アドバイス)をいただきました 」。現在は現地ニーズに応じた改良を施しており、16年にも導入が始まる。今後は全国の各病院や介護施設にも製品を売り込み「年間50台程度を販売します」と、本格的な量産が始まる。
快進撃が続くリーフ。「本格的なロボット社会の幕開けが楽しみですね」と水を向けると「そうですね。でもうちはロボット会社じゃないんですよ」と、森社長は最後にまたニヤリと笑うのだった。
(文=北九州・大神 浩二)
リーフ株式会社
所在地:北九州市小倉北区三萩野2丁目8番17号
設立:2008年1月
http://reif.p2.bindsite.jp/index.html>
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