ANAが航空機材の運用コスト削減を狙う「ピタッとフリート」とは?

新幹線開業やLCC台頭に危機感。保有量の多さを逆手にとる

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2016年度後半には90億円程度の収支改善を見込む
 全日本空輸(ANA)は、国内線の機材運用に新たな手法を導入する。これまでは四つのサイズの機材を需要に合わせて均等に運航し、全機をフル稼働していたが、新たに小型機の欧エアバス321を導入して全体の保有機材数を増強。大型機の米ボーイング777の運航数を減らす。保有機材に余裕を持たせた上で、需要期には777の運航数を増やして旅客収入を拡大し、閑散期にA321や737など小型機の運航数を増やして燃油費など運航コストを抑える。ANAは1月に737やA321を追加発注。より需給に適した機材運用を実現により、2016年度後半には90億円程度の収支改善を見込む。
 
 ANAが新たに導入する国内線における需給適合の新モデルは「ピタッとフリート」。機材の導入にはリース料や減価償却費など巨額の固定費が発生するが、大手航空会社は現状、機会損失を避けるため需要期に合わせた機材構成にして、大型機を多く保有している。

 しかし、国内線の繁忙期と閑散期の需要は、曜日や時間によって2倍以上、月間では平均2―3割の差がある。

 このため、需要期に合わせた機材構成で各機種をフル稼働する今の機材運用は効率的とはいえず、年間を通じた国内線の搭乗率は60%台半ば。3分の1は空席で飛んでいる計算だ。旅客収入では、需要期と閑散期の差がさらに広がる。

 一方、国内線の事業環境は、北陸新幹線など整備新幹線の開業や格安航空会社(LCC)の台頭で厳しくなっている。ANAは国内線の未来を「今のビジネスモデルの延長では状況を改善できない」(小平久仁雄グループ経営戦略部機材計画チーム主席部員)とし、3年程前から新たな機材運用モデルの検討を進めてきた。

 ANAは1月に787―10を3機、737―800を5機、A321ceoを4機、A321neoを3機と小型機を中心に機材を追加発注。すべてがそろう20年頃には、閑散期に777が8機程度、需要期にA321や737が8機程度、運航せずに駐機する。それでも「運航費用の抑制につながり年間で90億円程度の収支改善につながる」(同)と、効果は高いとみる。

 ANAではピタッとフリートを実行するため、運航や客室、整備などの部門で機種ごとの資格者を増やし、柔軟性を高める。また運航システムなどの改修を進め、需給みきわめの精度を高める。

 新たな機材運用モデルを打ち出す背景には、航空業界全体の課題でもある国内線事業の行き詰まりがある。ANAは機材を多く保有する逆説的な発想で、課題の払拭(ふっしょく)を目指す。

日刊工業新聞2015年03月31日 建設・エネルギー・生活面

COMMENT

高屋優理
編集局第二産業部
記者

航空会社に限らず、日本の人口減少による国内市場の縮小は、企業の成長を考える上で大きな課題になっています。航空業界では大手に加えLCCの参入など、競争が激しいこともあり、国内線の年間を通じた搭乗率はどこの会社も60%台半ば。撤退すれば、収益は他社に移ってしまうので、路線と便数はある程度確保しなければならないという、痛しかゆしの状況にあります。こうした中、国内線の将来を見据えてANAが打ち出したのが「ピタッとフリート」です。機材を多めにもち、その都度、需要に合った最適な機種を投入することによって、コスト低減を目指します。ANAの逆説の発想、うまくいくでしょうか。

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