<矢島里佳の新聞clip12.06号>光源氏がインフルエンザに

古典を学ぶことの面白さ。新しい切り口を読み解く

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 1週間の日刊工業新聞の記事の中から、気になった記事をセレクト。新聞ならではのセレンディピティー(何かを発見する能力、偶然をきっかけにしたひらめき)の楽しさを伝えて頂きます。

 みなさん、こんにちは。矢島里佳です。
 ウェブニュースは1つずつ興味のあるニュースを読める閲覧性の高さは魅力的です。
けれども、偶然に出会う記事たちが、自分の興味や人生に強く影響をあたえる面白さは、紙新聞ならでは。デジタルの時代だからこそ、アナログの面白さにも気がつく。双方の魅力を和えながらニュースと向き合っていければと思います。

 今週、選んだのはこの2本です。
●最古のインフルエンザ発見した「源氏物語」(「書窓」=11月30日付)
●柏の葉スマートシティ、第2ステージ始動(「千葉特集」=11月30日付)


 世界最古のインフルエンザ発見した『源氏物語』。およそつながりそうもないところで、新しい発見が起こる。まさか、光源氏がインフルエンザにかかっていたとは、考えもしませんでした。古典を学ぶ中で、こういった新しい切り口で読み解けたら面白かったなぁと思いました。

生物資源研究所所長・根路銘国昭氏


 日本の記述文化 素晴らしく研究分野の論文や文献を読むことがほとんどだが、印象深い文学作品が2冊ある。その一つが紫式部の『源氏物語』だ。

 現在、がんの研究を故郷・沖縄に戻り行っているが、専門はウイルスの研究。1998年に豪州でウイルス分野の国際シンポジウムがあった。そこでインフルエンザの最も古い記述を持つのはどの国かという話になり、英国や米国、ロシアなども手を挙げ、各国を調べることになった。

 それ以前に日本のインフルエンザの歴史を調べたことがあり、江戸時代の元禄年間に流行した記録があった。だが、それよりも古い記述があるはずだと思いあたった文献が『源氏物語』だ。読み進めていくと「夕顔」で、源氏はインフルエンザにかかっている。そして亡くなった夕顔を思い、会えない悲しさで源氏が泣く様子が書かれている。

 ウイルス学会で発表したが、そのような場で『源氏物語』について発表したのは、私くらいだろう。結局その時、各国で最も古い記述は私の発表だった。日本の記述文化は素晴らしいものだ。

 もう1冊、文学作品で印象に残っているのは森鴎外の『山椒大夫』だ。94年ごろに出版社から、初めて本を書いてくれないかと私に声がかかった。しかし、論文は書き慣れているものの、本の書き方が分からない。そこで論文風ではなく散文風に書けば、読む方も書く方も分かりやすいと思い立った。情景が短い文で表現されており、この本を参考に執筆した。

 また、書籍ではないが、最近読んだ論文のレビューでは、がん遺伝子は人間の進化速度よりもハイスピードで進化し、変異しているということだった。ウイルスもそうだが、がんも”意志“を持っていると言える。がんに立ち向かうには、がん遺伝子のたくましく生きる進化の姿を知る必要がある。人間は自然のほとんどを理解できていないという謙虚さを持って、研究に臨まなければいけないと考えている。

【余滴/新作待ち遠しい】
 国立感染症研究所や世界保健機関(WHO)などで要職を歴任したウイルス研究の国際的権威。現在は沖縄の自生植物が持つ抗がん成分を研究している。根路銘氏は獣医学博士号を持っており、自著の執筆の参考に医師だった森鴎外の著作を選んだのは興味深い。同氏の研究成果とともに、新たな著作も待ち遠しい。
(文=那覇支局長・三苫能徳)

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矢島里佳
和える
代表

柏の葉スマートシティについて。 日本全国に様々なインキュベーション施設が誕生してますが、街の中の一部として存在し、周辺の学生、研究者、企業、住民など多用な人材が集うというのは、珍しいと思いました。街に必要な物やサービスなどを生み出す企業が、自然と生まれてくる可能性が高まると面白いですね。

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